「地ビール」がブームに乗って好調だ。東京商工リサーチが2018年10月10日、全国の主要地ビールメーカーを対象としたアンケート調査「第9回 地ビールメーカー動向調査」で発表した。
ただ、全体の出荷量は前年から増加したものの、夏場の天候不順が好調の市場に水を差した。
一方、ビール大手5社(キリン、アサヒ、サッポロ、サントリー、オリオン)の18年1~6月のビール系飲料の出荷量は、前年同期比3.6%減と上期としては6年連続の下落で、過去最低を更新し続けている。
中国と北海道が「出荷量逆転」
出荷量が判明した77社の2018年1-8月における総出荷量は8655.3キロリットルで、前年比1%増となった。2017年の調査では前年比0.7%減だったが、今年は地ビールブームを背景に再び増加に転じた。
このうち、月別出荷量が判明した75社では、出荷量の月別増加率は4月(前年比6.4%増)が最高で、次いで7月(前年比5.7%増)、5月(前年比2.8%増)だった。
一方で、出荷量の伸びが期待された8月は、西日本など一部地域の天候不順により前年比6%減と伸び悩んだことから、全体の出荷量は微増にとどまった。
メーカー別の出荷量では、有効回答76社のうち、出荷量が「増加」したのは41社(構成比53.9%)で、「減少」は35社(構成比46.1%)だった。昨年は7割のメーカーで出荷量増となったが、今年は増減が拮抗した。
出荷量が増加したメーカー(有効回答41社)は、増加理由について「飲食店、レストラン向けが好調」(11社)が最も多く、「スーパー、コンビニ、酒店向けが好調」(9社)、「ビアフェス等イベント向けが好調」(4社)などが続いた。
スーパーやコンビニへの販売拡大に加えて、都市部でビアパブなどを開拓。健闘が光る。
一方、出荷量が減少したメーカー(有効回答34社)は、減少理由について「天候不順」のほか、「ふるさと納税の返礼品が減少」、「生産能力が限界」、「観光客の減少」、「飲食店、レストラン向けが不調」などを挙げた。
全国9地区の地区別出荷量(有効回答75社)では、関東地区が4,558.4キロリットル(前年比2.1%減)で最も多く、次いで中部地区(1,438キロリットル、前年比9.2%増)、東北地区(803.8キロリットル、前年比0.5%増)だった。
なお、昨年4番目に多かった中国地区は444.2キロリットルと前年比10.2%の出荷量減となり、452.9キロリットルと前年比18.7%の出荷量増となった北海道地区と順番が逆転した。
「流氷ドラフト」の網走ビールが「伸び率トップ」に
メーカー別の出荷量ランキングでは、全国第1号の地ビール醸造所「エチゴビール」(新潟県)が1.598キロリットル(前年比0.9%増)で首位となった。同社の首位は7年連続。
また、2位は「常陸野ネストビール」の木内酒造(茨城県)、3位は「ベアードビール」のベアードブルーイング(静岡県)、4位は「ベアレン・クラシック」のベアレン醸造所(岩手県)、5位は「伊勢角屋麦酒」の二軒茶屋餅角屋本店(三重県)だった。
なお、昨年出荷量3位だった「銀河高原ビール」(岩手県)は、出荷量非公開のためランク外となった。
出荷量の伸び率ランキングでは「網走ビール」(北海道)が前年比45.6%増でトップだった。同社はオホーツク海の流氷を使用した「流氷ドラフト」がヒットし、生産設備の増強でアジア圏への輸出も開始した。
2位は「ひぜん地ビール」の宗政酒造(佐賀県、前年比41.7%増)、3位は「川場ビール」の田園プラザ川場(群馬県、前年比31.4%増)だった。
調査は2018年1~8月の出荷量について、全国の主な地ビールメーカー217社を対象に、9月に実施した。