「高齢者住宅」をテーマに、2回にわたって取り上げてみたい。
前編は、増加する高齢者の住み替え。若干古いデータだが、総務省が発表した2013年の「住宅・土地統計調査」では、2009~13年までの5年間に高齢者世帯(家計を主に支える者の年齢が65歳以上の世帯)の住み替えは95万7100世帯にのぼり、このうち43.2%の41万3500世帯が民営の借家に住み替えている。
夫婦2人なら、2LDKで十分
こうした高齢者世帯の住み替え増加には、いくつかの背景がある。
高齢者世帯では、子育てを終えて子どもが独立すると、自宅が必要以上の広さとなる。筆者の自宅は戸建て住宅だが、2人の子どもが独立して以降、2部屋は使用することもなく、物置きと化している。夫婦2人にとっては不必要な広さであり、ふだんの掃除や家屋のメンテナンスは結構な負担になる。
じつは筆者も、妻と夫婦2人であれば2DK程度の広さで十分と考え、マンションにでも引っ越そうかと真剣に話し合ったことがある。この計画は今のところ棚上げされているが、いつか復活する可能性は大きそうだ。
さらに高年齢化が進むと、交通弱者、買い物難民といった生活インフラ上の問題が出てくる可能性がある。クルマで買物に行けるうちはいいが、運転が覚束ない、あるいは病気やケガで運転ができなくなれば、急激に日々の生活に影響する。こうした点を予防するためには、利便性がよい市街地へ住み替えるのも一案となるわけだ。
また、高齢化の進展と共に、住宅のバリアフリー化が必要となるが、自宅をバリアフリーに改築するための費用負担を考えた場合、住み替えは選択肢の一つとなろう。正確な統計はないが、民営の借家に住み替えた41万3500の高齢者世帯の中には、サービス付高齢者向け住宅が相当数含まれていると推測される。