「こんな汚い字じゃお客さんが読んでくれないだろ!だからお前は仕事ができないんだよ!」
「男のくせにチマチマしたことばかり書いて。男ならもっと大胆な企画書を書け。だからお前は相手に舐められんだよ」
「美人だしいい歳なのに、この中学生みたいな文字は......。やっぱり三流大学出身の女はこんなもんか」
会社で使う資料はもちろん、封筒の宛名書きもパソコンが当り前の時代。直筆で書く機会があると、私の文字は相手にどんな印象を与えるのだろうとドキドキします。
字が汚くても優秀な人はいる
大きく伸び伸びとした字を書く人は朗らかで、丁寧にゆっくりとコンパクトに書く人は几帳面。そんなイメージを持つ人が少なからずいるようです。もしかしたら、今でもそう思っている人はいるかもしれません。
また、パソコンで作った文章でも製作者ごとにテイストが異なります。「優しい」「軽い」「ずっしり」など書いた人の人柄が文章を通して見えたりもするわけです。作家さんの文章のタッチが好きで作品を読み続けているという方も多いのではないでしょうか。
このように人それぞれ文章に対して思い抱くイメージがあること自体はまったくかまわないのですが、それを冒頭のように発言してしまうと「テクスチュアルハラスメント」=文章にまつわる(性)差別に該当することがあります。
文字の大小やテイスト違いは男女の性差に関係ありません。また、字が汚いことが必ずしもその人の能力と結びついているわけでもありません。字が汚くても優秀な人もいれば、小さな字を書いても図太い神経の持ち主だっているのです。
冒頭の発言は、主に上司と部下の関係性で言われることが多いのですが、度が過ぎると個人の名誉と尊厳が傷つけられたとして、損害賠償を請求される可能性があります。