イケイケ社長がつくった「決められない」企業風土
2017年にW社の組織管理が変更になった折に、T社長からは「上場に向けて、合議制を旨とする組織管理を定着させるために大幅な権限委譲を実施し、私も一メンバーとして参加する執行役員会議で大半のことは決めるやり方に移行した」と聞いていました。
さらに今年に入ってからは、「新しいやり方が徐々に組織に馴染んできて、組織風土が変わりつつある」と、順調そうなことも聞いていただけに、Mさんの話はちょっと意外でした。
組織構成とMさんのポジションを確認すると、W社は社員70人ほどの組織で、Mさんは一般管理職で部門長の補佐役として部門管理の一翼を担う仕事を任命されているとのこと。部門長のさらに上席に執行役員が位置し、複数部門を束ねた事業部長を兼務している、そのようなライン構成になっているとのことでした。
この構成を聞いて私が気になったのは、社長が権限委譲して物事を合議制で決めることに慣れてきた執行役員までと、その下に連なる部門長以下との間に風土ギャップが生じているのではないか、ということです。
すなわち、日常的に社長とやり取りがある執行役員や事業部長クラスまでは、組織風土改革の流れに乗っているものの、部門長以下担当レベルまでは古い風土の中に取り残されてしまっているのではないかと。
組織の上層部分は変わろうとしているにも関わらず、下層部分は以前の社長決裁で重要事項を決めてきた流れの中で、「自分たちは何も決めなくともいい」という風土が継続されている。上層部分の変化を聞いて、大企業育ちのMさんでも馴染みやすい組織になりつつあるに違いないとの判断は、ある意味私の早とちりだったかもしれないと思うと、W社を紹介した手前Mさんには少し申し訳ない気持ちになりました。