「スマホをタップするだけで月収200万円!」「超お手軽副業、夫より稼いじゃう私」。――通称「あやパン」というカリスマ美人起業家が考案したビジネスをうたった事業者が2018年10月17日、消費者安全法第38条(虚偽、誇大な広告・表示など)に違反したとして消費者庁から実名告発された。
まるで、女子アナの通称のようだが、「あやパン」は架空の人物で、ウェブサイトに紹介した金儲け体験談もウソだった。事業者に多額の現金を支払ったが、ちっとも儲からなかったという相談が全国の消費生活センターに寄せられており、消費者庁は注意を呼びかけている。
購入した情報商材には方法が書かれていない...
この事業者は情報商材会社「Quest(クエスト)」(東京都新宿区西落合・遠藤淳一代表)だ。通称「あやパン」こと加藤絢子(あやこ)という主婦が、何度もネットビジネスに挑戦しながら失敗、ついに「スマホをポチポチするだけで稼げる」という「タップイズマネー」ビジネスを考案したという。Questはネットを通じて、その「タップイズマネー」の商材を売ってきた。
その手口はこうだ。
(1)SNSなどに「スマホをタップするだけで月収200万円!」「無料モニター募集中」「応募者全員ハズレなし」「爆速即金ゲット!」などの広告を掲載。抽選イベントを実施しているウェブサイトに誘導、応募者に名前とメールアドレスを登録させる。
(2)約2日後、特別プレゼントを受け取ることができるモニターに当選した旨を送信、申し込みウェブサイトに誘導する。
(3)申し込み者に、カリスマ起業家「あやパン」のメッセージと、「毎月10万円以上稼いでいる」モニター1期生4人の体験談の動画を送信。ただし、あやパンのメッセージや体験談には、具体的なビジネス内容は何も明かされていない。「5万円のキャッシュバックが必ずあるから絶対に損をしない」と強調したうえで、「タップイズマネー」の方法をPDFファイルにしたという情報商材を1万8000円で売りつける。
(4)情報商材をメールで受け取った申し込み者は、「タップイズマネー」がモノを安く仕入れて高く売る、いわゆる「背取り(せどり)商法」であることを初めて知る。しかし、この初めの商材にも具体的な方法は書かれていない。「興味のある方は電話予約フォームからお気軽に相談を」と誘導される。そして申し込み者には電話で、ビジネスの方法が書かれた商材には7万円から120万円までのコースがあり、「たとえば80万円のコースだと遠隔サポートがつきます。次のクレジット決済までには、確実に80万円を稼げます」などと執拗に勧誘するのだ。
(5)しかし、支払った金額以上に収益を上げることは非常に難しい。
「簡単に高額収入が得られることなどありえません」
消費者庁が、「Quest」の遠藤淳一代表らから事情聴取した結果、ビジネスを考案したという「あやパン」こと加藤絢子という人物は実在しないことがわかった。4人の1期生たちも架空の人物だった。また、最初の商材を買った申し込み者全員に5万円をキックバックするという話もウソで、もらった人は1人もいなかった。
消費者庁の告発に対し、遠藤淳一代表は「廃業する」と述べたというが、10月17日現在、同社の商業登録については解散登記も清算人選任登記もされていないという。
消費者庁ではこうアドバイスしている。
「インターネット上には、スマホアプリを操作するだけで、収益が得られるとうたう業者が数多くします。ほかにもカリスマ的な指導者が収益をあげていることをアピールしたり、ウソの体験談を掲載したりして、簡単に稼げることを信じ込ませようとする業者が後を絶ちません。情報商材は、購入してメールで届かないと中身を確認することができません。簡単に高額収入が得られることなどありえません。少しでも怪しいと思ったら、すぐに契約せずに、消費生活センターに相談してください」
(福田和郎)