百貨店が大事なのは「買い物」してくれる人
次の写真は東京都内の大手百貨店の入り口付近である。長さ10センチから25センチほど、いろんな長さの鋼の棒が下から上に向かって突き出ている。こんな光景がこの百貨店の1階部分を取り巻いている。
これもさっきの地下歩道と似て古い話だが、この百貨店が大改装した折には、鋼の棒はまったくなかった。ここに腰を掛けられた。ちょっと休みたい折には助かったし、待ち合わせの場所としても、うってつけだった。ところが、いつの間にか、鋼の棒が取り付けられ、座れなくなった。
百貨店にとっては、店内で買い物をしてくれる人こそが大切で、店の外で、しかも百貨店の建物に腰掛けている連中は「異質」な存在なのだろう。そんな人たちを嫌って設けた鋼の棒だと思うが、「不寛容」が過ぎるのではないか。
この百貨店に隣接して、おしゃれな店が集まっているビルがある。ここの1階部分の外回りには百貨店のような鋼の棒がないので、腰を掛けられる。ところが、「緊急時にシャッターが降下します。お掛けにならないように」との表示がある。やはり腰掛けがイヤなのだろう。脅されているみたいである。
「異質」なものを真っ向から拒絶し、排除する。世間にはそんな「不寛容」がはびこっていないだろうか。それが世の中をギスギスしたものにしてしまっている。そういう気がするのである。(岩城元)