政府が外国人労働者の受け入れに関して大々的に方針転換し、単純労働を含めて受け入れ拡大すると報じられている。
まだ確定ではないものの、「特定技能1号」「特定技能2号」の二つの新たな資格を導入し、2号については最長10年間で、家族の帯同も認めるとされている。「移民は受け入れない」としてきた従来の政策からの大転換と言っていいだろう。
【参考リンク】外国人労働者の永住可能に 熟練技能者対象 法務省、新在留資格創設へ
単純労働と永住権
今回の政策案でのポイントは2点だ。
・事実上の単純労働での移民受け入れ解禁
世界的にみれば、1年間の滞在であれば移民とみなされるため、1号5年、2号10年という今回の外国人労働者受け入れは事実上の移民といっていい。
一応、受け入れ業種は限定されるものの、高いスキルが必要な業種ではないため、少なくとも1種については事実上の単純労働の受け入れというべきだろう。
・更新の有無によっては事実上の永住権も
現段階では確定していないが、2号については資格の更新によっては事実上の永住権となる可能性もある。実際、10年も家族と一緒に日本で暮らした人間に「10年経ったから出ていけ」とは言えないだろうし、言うべきではないと筆者も考える。
10年も家族帯同で受け入れるのなら、死に水をとってあげる覚悟で受け入れるべきだし、それができないのなら、10年も他人の人生を引っ掻き回すのはやめるべきだ。
政府は「移民じゃない」と強弁
最大の問題は、政府が「あれは移民ではない」と言い訳しているせいで、誰も移民受け入れの議論を本気で行っていないという点にある。
移民だからという理由で社会保障の輪から締め出すことは許されない。彼らを社会保障の枠組みにどこまで参加させるのか、そのコストはどうするのかは未定のままだ。
政治的な権利も誰も議論していない。将来、もし彼らが数十万人規模でデモを行い「我々に永住権と選挙権を!」と要求したなら、我々はどう対応するのか。そういう議論が行われている様子もまったく見られない。
「移民ではないのだから、面倒なことはすべて先送りしてかまわない」
そうした政府のスタンスのまま、日本社会はなし崩し的に大きな転換期を迎えている。
(城繁幸)