近年、健康の維持やダイエットなどのためにスポーツジムやフィットネスクラブ、ヨガ教室などに通う人が増えている。それとともに、全国の消費生活センターに寄せられる契約時や利用時のトラブル、高額な解約料などの相談件数も増加している。
2013年に2894件だったのが、17年には3552件と1.2倍に増え、18年は前年を上回るペースで増え続けているため、10月11日、国民生活センターが「入会する時は、しっかり契約内容を確認して」と注意を呼びかけた。
体験教室のはずが「契約しないと帰さない」
相談事例をみると、契約時に意に沿わない形で入会したため、解約を申し出ると、
「契約期間中は解約できないと言われた」
「高額な中途解約料を請求された」
などといった、契約時と解約時のトラブルが非常に多い。
たとえば、こんなケースだ。
【事例1】強引な勧誘で入会させられ、解約を申し出たが拒否された
ホットヨガの体験教室の雑誌広告を見て申し込み、1000円支払って1時間コースを受講した。体験後に帰ろうとすると、「体験教室は入会を考えている人が対象なので、入会してもらわないと困る」と言われた。断ったが、契約書にサインしないと帰らせてくれない雰囲気だった。40分もしつこく勧誘された後、契約書に署名して、入会金と使用するヨガマット代など2万7000円を支払った。しかし、勧誘で怖い思いをしたので通う気がしなくなり、解約を申し出たが、「継続必須期間3か月は解約できない」と言われた。(50歳代女性、徳島県)
【事例2】予約制のジムなのに予約が取れず利用ができない
予約制のジムを無料体験のあと入会金約1万円、月会費約9000円で契約した。トレーニング時にコーチの指導が付くため予約が必要だが、予約の電話がほとんどつながらず、やっとつながっても予約枠が一杯で予約が取れない状況だ。これでは入会した意味がない。規約には、入会金は返金不可と記載があるが、クーリングオフ(一定期間内の契約解除)は可能か。(40歳代男性、大阪府)
【事例3】ジムの中途解約料が当初の説明と異なり高額すぎる
痩身(そうしん)エステなどのサービスが無料で付き、個人向けメニューを指導してくれるというスポーツジムで、個人トレーニング32回分、6か月のコースをキャンペーン料金の18万8000円で契約した。毎月約3万円の分割払いだ。契約時に、中途解約した場合の解約料を聞くと、「解約の際はキャンペーン料金ではなくなるため、通常料金との差額の2万円を支払えばよい」と言われた。3か月後、約6万円を支払ったところで解約を申し出ると、「6か月以内の解約は通常料金で精算し直しになる」と言われ、16万円を請求された。説明と異なり納得できない。中途解約でこんなに支払わなければならないのか。(30歳代女性、兵庫県)
90歳の女性にプロテインを定期購入させる?
【事例4】高齢の母が解約を申し出たが引き留められ、逆にプロテインを定期購入させられていた
実家で一人暮らしの90歳代の母は、近所のスポーツジムと契約しているが、ほとんど行かないので、母と共にジムに行き解約を申し出た。しかし、ジムのスタッフが泣きながら引き留めるので、根負けして契約を継続したが、その後も月1回行くかどうかだった。数日前、母の銀行の通帳を記帳すると、ジムの名前で約1万円が2回引き落とされていた。ジムに確認すると、筋肉を維持するプロテインを定期購入していた。高齢の母に必要とは思えず、無理に買わされたのではないか。家を探したら、未開封のプロテイン4袋あった。母に契約のいきさつを聞いても高齢で要領を得ない。ジムの対応は問題ではないか。(60歳代女性、東京都)
【事例5】解約したら、サービス開始前なのに全額支払えと言われた
女性専用ダイエットジムで、「絶対にやせられる。入会金を無料にする」などと説明され、2か月週2回のコースを約30万円で契約した。その場で予約金1万円だけ支払い、残金は後日支払うことにした。女性専用ジムなのにトレーナーが男性で威圧感があったことと、予想より契約金が高いことから、翌日退会を申し出た。トレーナーから「解約はできない。残金全額を当社の口座に支払うように」と言われた。1回もサービスを受けていないので支払いたくない。(20歳代女性、茨城県)
こうしたトラブルについて、消費者庁はこうアドバイスしている。
(1)体験だけするつもりで参加したところ、入会を強要されたり、断っているのに執拗に勧誘されたりするケースが目立つ。「本日中の申し込みなら入会金の免除や月会費が割引になる」と契約を急がされる例も多い。そして、根負けして契約し、あとから解約を申し出て、結果的に高額の解約料を請求されるトラブルが発生する。
少しでも不安のある契約は断固拒否しよう
(2)悪質な業者から消費者を保護する制度として、契約から一定の期間内であれば契約を解除できる「クーリングオフ」がある。
しかし、これは訪問販売やマルチ商法など「不意打ち性の強い販売方法」に適用される制度で、スポーツジムのように店舗内で交わした契約には原則として適用されない。だから契約は慎重に行なおう。少しでも不安があったり、納得がいかなかったりしたら、断固、勧誘を拒否しよう。
(3)また、「予約が取れず利用できない」「当初あったプログラムがなくなった」などの利用に関して、内容が当初の予定と異なるため解約したいという相談も多い。
特に、ダイエットを目的としたジムでは、「1か月に5キロはやせると勧誘され、指導どおりマシンでの筋トレや食事制限を行なったのに効果がなかった」「1か月で効果がなければ全額返金すると言われたのに、対応してもらえなかった」という相談がみられる。
(4)こうしたトラブルを防ぐためには、契約前に、契約書面や規約を必ず読み、内容を細かく確認してから契約しよう。スポーツジムの契約では、施設の利用や予約方法、休会・退会の手続き、解約時の料金精算・支払い方法などは、契約書面や規約に記載されているのが一般的だ。トラブルの大半が、利用者が記載内容を認識していなかったために起こっている。契約の際には、ジムのスタッフに細かい点まで確認し、もし明記されていなければ、書面の提出を求めよう。
(5)特に問題になりやすく、ぜひともチェックしたいのが解約時の条件だ。
解約料に関するトラブルの背景には、契約者が「利用をやめれば料金は支払わなくてもよい」と勝手に思いこみ、想定していなかった請求をされて、相談につながるケースが多い。
契約をする際には、「いつでも解約できるのか」「解約した場合の請求金額はいくらか」を契約書面や規約で確認すると同時に、スタッフに説明を求めることが大切だ。特に、キャンペーン期間中の入会金無料や月会費の割引を行っている契約では、その条件として、一定期間解約ができないことや、中途解約時に当初無料や割引されていた料金を請求される例が多いので注意しよう。
(6)ジムに入会すると、会費以外にヨガマットやローションなどの器具・用品の購入を勧められたり、健康食品を定期購入させられたりする例も少なくない。
必要ないと思ったら、断固拒否しよう。また、スタッフの対応が悪い、ルールを守らない会員に注意してくれない、などジムに対する相談もみられる。その場合は、ジムの管理会社に訴えよう。
(福田和郎)