第4次安倍内閣が発足した。2012年12月の第2次安倍内閣発足以来、アベノミクスの効果も手伝って日本株は堅調に上昇。そのことが高い支持率を維持できている背景にあることは間違いない。
そこで、直近3年間の業種別値上がり・値下がり率(2018年10月5日付)をチェックしたところ、36業種中値上がりしたのは25業種、値下がりは11業種となっている。その中で最も上昇したのは、ダントツで石油・石炭製品(150.54%)。2位の精密機器(62.38%)を大きく引き離している。
一方、最も下落したのは造船(▲27.30%)だった。
2016年1月に大底の1バレル27ドル
業種別で石油・石炭製品が大きく上昇し、造船が下落した背景を考える際避けては通れないのは、原油価格の推移である。
2014年に1バレル100ドルを超えていたWTI原油(米テキサス州西部などで生産される原油。ニューヨークマーカンタイル取引所に上場される、国際的な原油価格の指標の一つ)は急落。16年1月に大底の27ドルを付け、その後上昇して現在75ドル前後で取引されている。原油は投機的な性格を持つため価格変動が激しく、日本経済は原油価格の変動に振り回されてきたといっても過言ではない。
原油価格の決定に非常に大きな力を持つのは、中東諸国をはじめとする産油国の組織、石油輸出国機構(OPEC)だ。もっとも、原油価格は自由市場で取引されるため、これらの国に価格決定権はない。
しかし、彼らには原油の供給量の決定権、つまり原油の増産をしたり減産をしたりする権利がある。もし減産で合意すれば、原油価格を引き上げる要因となる。
揺さぶりをかける「トランプ発言」
9月20日、トランプ米大統領は自身のツイッターに、「中東諸国は原油価格をますます引き上げている。OPECは(原油を増産合意して)原油価格を引き下げるべきだ!」と、記した。
この発言を受けて、原油相場は一時的に荒れたものの、値動きは小さく、その日のうちに元の価格まで戻って上昇トレンドを継続した。
世の中、どうにもならないことはある。ましてや、相場はその最たるものかもしれない。トランプ米大統領にとっても原油価格は自身の手でどうにかなる問題ではないようだ。原油価格は、しばらく上昇するか、よくて横バイが続くのではないだろうか。
では、原油価格の上昇は、日本経済にとって本当に悪いことだけなのだろうか――。 原油価格の上昇は電気料金の引き上げを伴うため、多くの製造業にとってはマイナス要因であるほか、ガソリン価格の高騰を伴うため輸送業者にとってもいいニュースではない。
しかし、原油価格の上昇は、一般的に資源開発関連企業にとっては、うれしいニュースだ。商社の株価にとっては好材料となるかもしれないし、ロシアや中東諸国といった資源国の経済成長を促すため、現地で事業展開する関連企業にとってもプラス要因になるだろう。(ブラックスワン)