2018年1月に「社畜」の問題をパロディー動画にした「社畜ミュージアム」をインターネットで発信。200万以上も再生した中小企業基盤整備機構(中小機構)が10月3日、第2弾の動画を公開して早くも話題になっている。
「今日、部下が会社を辞める。」がそれだ。第1弾を、さらに強烈にしたブラックユーモアの動画に仕上がっている。
あの「社畜ミュージアム」の第2弾
中小機構は経済産業省所管の独立行政法人で、中小企業の新事業展開や情報・経営支援ツールなどを提供している。話題の動画「今日、部下が会社を辞める。」は、働き方改革に向けて、ITツールの促進を訴えるのが狙いだ。
物語は、職場で開かれた送別会で、上司が辞めていく部下に「3年間お疲れ様でした」と花束を渡すシーンから始まる。穏やかなBGMと共に、上司は部下との思い出を回想する。
「入社したときから、声は小さいし、要領は悪いし、苦労ばかりだった」
「あっという間の3年間。私はいい上司だっただろうか」
と感慨にひたる上司。
部下と過ごした日々を回想し、懐かしい気持ちで目頭を熱くする。初めて会った時、「新入社員の加藤です。よろしくお願いします」と初々しく頭を下げた部下。加藤を連れ、あいさつ回りに得意先を回る上司。
「要領の悪いヤツだった。失敗ばかりして、一緒に取引先に頭を下げに行ったこともあった。徹夜で飲んで励まし、肩を組んで始発の駅まで歩いたこともあったな。よく成長してくれた」
上司の知らない所で残業していた若手社員
走馬灯のように現れる加藤とのシーンに、微笑みを浮かべる上司。最後は加藤に「頑張れよ」と声をかけて送り出す上司......。感動ストーリーで終わろうとした瞬間のこと。突然、1人の若手社員が上司を突き飛ばし、床に倒した。
「勝手にいい話で終わろうとするな! なんでうちの会社、若手が次々と辞めるのか。いい加減に気づけよ!」
と絶叫して怒り出す。
この行動が引き金になり、会社内で暴れ始める若手社員たち。コピー機が破壊され、机をひっくり返され、書類が宙に舞う。その様子をスーパースローで描きだす。BGMは賛美歌「荒野の果てに」をアレンジ。軽やかだが、どこか重苦しい。
じつは、若手社員たちは上司の知らないところで、毎日深夜まで残業していたのだ。その悲しい姿が映し出され、テロップが流れる。
「中小企業の73.7%が人手不足を感じている」
「人手不足を残業などの業務過多で解決する中小企業が60.7%」
「中小企業の新入社員の52.4%が3年以内に辞める」
そして最後に、
「会社が崩れる前に、ITツール導入で会社と社員の負担を減らす」
という文字がアップで流れる。
人材不足問題を、残業などの業務過多で対応する中小企業に、「残業の強制ではなく、ITツールの導入を促進して生産性向上を目指して欲しい」という中小機構の強いメッセージが込められている。
この動画にネット上では、
「予想外の結末。人は財産。これからの時代は社員を大事にする企業が伸びる」
「最後までサイトで動画を閉じるな。この広告は二度はじまる」
「つ...ついにこういうCM作ったか...中小機構」
と、称賛の声が寄せられている。(福田和郎)