「居候独身」はペットか?
――天野さんは、実家に居候する独身者は「加齢しても子どもとして居場所をキープする」と書いています。
犬や猫はいつまでたっても子どものように可愛く甘えますが、これは親が「独身者をペットのように可愛がる、ペット化する」という理解でいいのでしょうか。
天野さん ブランドバッグのように思っているのでは。もしくは血統書つきペットでしょうか。親にとっては他ならぬ「私の」遺伝子を受け継いでいて、自分への自己愛も含めて可愛くて仕方がない。それを手塩にかけてこんなに立派に育てた。だから(私よりも、または、私の気にいる)すごい女性にしか、あるいは男性にしか渡せないという気持ちです。
実際、団塊世代の女性からは「夫より息子のほうが理想の男性」などという意味不明な発言を聞きます。私からすると、息子はいずれ他の女性の元へいくので、それって超負け組女性の意見、に思えるのですが(笑)。
たとえば、パワハラを訴えた体操女子選手の親御さんは、映像から見る限り誰が考えても凄惨な暴力をふるうコーチに、娘の指導継続を求めました。私は、同じ娘を持つ親として理解できません。この人たちは、「オリンピック選手の親」という肩書き、ブランドがほしいのでしょうか。子どもは国産の自動車よりも「世界で誰もが知る」外国ブランド車であってほしいのでしょうか。
――レポートでは、「男女ともに50代以降は親の介護が発生するため、実家に同居する割合が増えるのではないかと予想したのに、むしろ減少した」と書いています。これは、結婚して親になれば親の苦労がわかるが、独身者にはわからないから親に冷たいとは考えられないでしょうか。
天野さん 自己愛に満ちた親が育てた子どもは、同様に自己愛に満ちていると思います。しつこいですが、「子は親の鏡」だからです。実家暮らしの独身者は、親から多大なメリットを受けても親には感謝はしていません。だから、年老いた親が自分にとって使いものにならなくなったら、いらないのです。
これは親の立場でも同じ。体操選手の親御さんが「オリンピックに行けるよう、暴力をもってしてでもわが子を指導してほしい」、つまり「自慢できない子なんてほしくない」というのと全く同じこと。相手の立場ではなく、自分の立場からしか「愛している」と思えないということです。
カウンセラーの世界では、これを「条件付の愛情」と呼びます。「......できるからいい子ね」と育てると、子どもは自己肯定感が低くなり、精神衛生上よくないとされています。また、親が何ごとも先んじて火消しして育てているために、自分が否定されがちな環境が非常に苦手になりがちです。結婚生活もその一つといえるでしょう。