マザコンが先か、ムスコンが先か?
――そうすると、居候独身者が増える原因には親、特に母親の責任があるということですか。
天野さん はい。これは少子化の負のループの一面ともいえます。私の祖父母世代は兄弟姉妹が9人、10人などというのが普通でした。ですので、子どもたちは当然に親の愛情をできるだけ引き付けようと「オレオレ、ワタシワタシ」とやっていました。しかし、ここ半世紀ほど子どもは2人で推移。親の愛情争奪戦の相手はいても1名程度です。しかも高度成長期に専業主婦が登場、妻は「亭主元気で留守がいい」、夫は「24時間闘えますか」で、妻は子どもにたっぷり「愛情」という名の暇つぶし、夫との関係の代償行為を注ぐようになりました。
これは兄弟姉妹が多く、共働きが前提の農村社会では起こらなかったことでした。こうして、母子密着化、恋人親子化、子どものブランド化が育まれたと思っています。今年(2018年)7月、エリート銀行員の息子が殺めた妻を、母親が一緒に庭に埋めた事件が話題になりました。彼女は自分の病気の悩みなどを、夫ではなく元カレに相談していました。そして、会うたびに息子の話ばかりをして、「息子が可愛くて仕方ない、溺愛している」と涙ぐんでいたと言います。この母親のケースが象徴的です。
――そうすると、独身男性はマザコン、母親はムスコンというケースが多いのでしょうか。
天野さん レポートのデータを見るとわかりますが、独身者は「母親と同居」が非常に多い。男女とも各年代で「父親と同居」の6~13倍と、段違いに多いのが特徴です。高度成長期には休日出勤・長時間労働が当然とされ、イクメンなんてありえなかった時代が続きました。専業主婦のワンオペ育児が母子密着を生み出し、結果として子を溺愛するようになったことが元凶と思います。
母親と娘の関係が「友達親子」になるのに比べ、母親と息子は「恋人親子」に向かいます。子どもは何もわからずに生まれてくるわけですから、順序としてはまずムスコンがあり、それからマザコンですね。