同居しているのに親の介護には冷たい
海外メディアがいぶかしむ理由がもう一つある。独身者が自立して1人世帯でいると、経済的に非効率だからだ。
光熱費や家賃、食料品のまとめ買いなどを考えると、1人世帯は2人世帯より約1.4倍コストがかかる。「結婚したほうが得なのに、なぜ?」というわけだ。そこで、天野さんは独身者の世帯構造を国勢調査や、国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」などを元に分析した。
すると、「60代近くまで親に依存する」という驚くべき独身男女の実態が浮かび上がってきた。
図表4、5を見てほしい。独身の男女が年代別にどのような世帯に住んでいるかをまとめた図表だ。表の中で一番下の項目「親・親族との同居」の数字が、実質的に「実家で暮らしている」割合だ。20代~40代の独身男性は、「両親のみ」、または「母親のみ」との同居という「親子密着世帯」が半数を超え、祖父母も含めた「実家で暮らしている」割合は6割以上で推移している。
両親が70代を超える50代になって5割を切り(49.9%)、両親が他界、または施設に入る60代になって、ようやく実家で同居する割合が3割を切る(28.1%)。
こうした傾向は独身女性の場合も同じだが、男性よりも実家で同居する割合が各年代で高い。天野さんは「50代から60代にかけて、親がいなくなるなど同居できなくなり、しかたなく慣れない自立を始める姿が見てとれます」と語る。
意外だったのは、男女ともに50代以降は親の介護が発生するため、実家に同居する割合が増えるのではないかと予想したのに、むしろ減少したことだ。その代わり、兄弟姉妹との同居や一人暮らしが増えている=図表4、5参照。その理由について、レポートでは「親が施設に入る・他界するから」と推測しているが、「親に依存してきた独身者だからこそ、逆に親の面倒をみる介護はしたがらない」と考えられないのだろうか。
天野さんはこう語った。
「私見ですが、実家暮らしの独身者は、同居の多大なメリットがあっても、それに対して親には感謝はしていないと考えられます。当然だという気持ち、もしくは感謝など考えたこともないでしょう。だから、年老いた親が自分にとって使いものにならなくなったら、いらないのです」