成果主義でなりふり構わず稼ぐサラリーマン
その一方で、年功序列制が廃止され、成果主義が当たり前になったサラリーマンたちは、至上命令に追い込まれ、なりふり構わず稼がなくては自分の地位が危ないと、危ない橋も渡らざるを得ない状況になります。
そんな流れが、冒頭のような「収益追求型不祥事」を経済界に蔓延させたと言えるのではないでしょうか。一体どこで何をどう間違えてしまったのでしょう。どのような方向修正をはかれば、増発する企業不祥事を減らすことができるのでしょうか。
最近目にした、東京海上ホールディングスの永野毅社長のインタビュー記事に興味深い話がありました。
高知県育ちで高校時代水泳部員だった永野氏は、競泳でも遠泳部門に所属していました。競泳部門は、長くとも数百メートルの距離でタイムを競ういわゆるレース部門。対して遠泳部門はあくまで数キロの距離を微妙な駆け引きをしながら先に目的地に到達することを競うという競技です。
タイムは二の次です。さらに競泳競技にない特徴として、相手もなく海峡を渡るとか岸から島をめざすとか、自らに試練を課してその達成に向かう、言ってみれば特定の山の登頂をめざしてただひたすら登る山岳部とも共通する目的地到達に向かう競技でもあるのです。
永野氏はそんな遠泳競技から、今の企業経営に活きる大切なことを学んだといいます。
「競泳部門はタイムを縮めて選手権に出る。そこでまたタイムを競って優勝を目指す競技です。遠泳は違います。競争相手がいようといまいと困難なチャレンジを自らに課して、それを目的としてひたすら泳ぎ続ける。なんで俺たちはバカみたいに泳ぎ続けているのだろう、という疑問を持ちながらも目的を達成することの喜びを感じて、また次なる目的に向かう。その繰り返しです。そんな競技の中から身につけた自然と目的を確認するクセが、今に役立っていると思っています」