【連載】事業承継のサプリメント(その4)法律は冷酷...... 相続で社長の座を失うことに(湊信明)

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   夫婦・兄弟の不仲が相続時にトラブルになることは事業承継の場面でも同じです。

   会社を任されたほうは一生懸命に頑張りますが、それでも法律に照らすと、必ずしもその努力が認められるとは限りません。ときに、法律は冷酷なのです。

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取締役会開かず、長男が経営の舵取りを続行

   私の父は、戦後間もない頃に会社を創業。以来、父が代表取締役を務め、自社株(200株)もすべて保有していました。父と母の間には、長男である私と、次男がおります。残念なことに父と母の夫婦仲は悪く、長年別居状態にありました。また長男の私が後継者と目され、特別扱いを受けてきたこともあって、私と次男との仲も悪く、次男は母になついていました。

   私は、大学卒業後は経験を積むため電機会社に就職していましたが、数年前に父の会社に入社し、その際に、父から同社の株式の40%(80株)の贈与を受け、取締役に就任しました。

   しかし、その後しばらくして父は、認知症を発症して経営から身を引くこととなり、取締役会にも株主総会にも出席することができなくなってしまいました。

   私は、取締役の任期満了を迎え、取締役再任のための株主総会を開催しなければならなくなりました。そこで私は、議事録上は父が株主総会に出席して議決権を行使した形にして、私を取締役に再任し、取締役会も現実には開催せずに議事録を作成するだけで、私を代表取締役として選任して経営を続行してきました。

   その後、10年近く経営してきたところで父は死亡し、相続が発生することになりました。

   そうしたところ、母と次男から私に内容証明郵便が届きました。

   何と、実際に株主総会も取締役会も開催していない以上、私は代表取締役としての資格を有していないこと、株主総会で、相続財産となっている株式120株全部を母と次男が行使して、次男を取締役とし、取締役会を開催して次男を代表取締役に就任させると書いてあります。そんなことが認められるのでしょうか?

   これまでも、そして今後も父の遺志を継いで会社経営に努めようとする長男に、降りかかったトラブル。事業承継には、こうした思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。長男にしてみれば、「今さら、なにを!」と言いたい気持ちでしょう。

   しかし、事態はそう簡単ではありません。順番に見ていきましょう。

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