偶然なのか、それとも余程の経済政策通がブレーンにいるのか――。
2018年8月21日、菅義偉官房長官は日本の大手携帯事業者には競争が働いていないと指摘し、携帯電話の料金は今より4割程度下げる余地があると発言、物議を醸した。
この発言の背景には、「自民党総裁選を控えた安倍首相の思惑」(永田町関係者)があるのは間違いない。
ケータイ事業は儲かる!
ただ、安倍政権による携帯電話料金の引き下げ圧力は、今に始まったことではない。2015年9月には安倍晋三首相自らが、「携帯料金などの家計負担軽減は大きな課題である」と発言し、当時の高市早苗総務大臣に携帯料金値下げの検討を指示している。「この動きも菅長官の振付け」(前出の永田町関係者)と言われている。
今回は、菅長官自らが携帯電話料金の引き下げに言及。携帯電話事業は「国民の財産である公共の電波を提供されて事業しており、(利益率の高さから)競争が働いていないといわざるを得ない」とまで言っている。
たしかに2017年の情報通信白書よると、2016年の1世帯当たりの電話通信料支出は前年比2.3%増の12万392円となっている。18年3月期の営業利益ではソフトバンク、NTTドコモ、au(KDDI)の通信大手3社がベスト5入りしており、携帯電話事業がいかに儲かるかが浮き彫りになった。
しかし、筆者が驚いたのは、この携帯電話料金の引き下げと2019年10月に実施される消費税率の10%への引き上げの関係だ。
試算では、消費税率を現在の8%から2%引き上げて10%になると、税収は約5.6兆円増加するとされている。ただ、日本銀行の試算では酒類・外食を除く食料を軽減税率の対象品目とした場合、その影響額は1兆円、教育無償化による影響額が1.4兆円となり、家計全体への負担額は2.2兆円程度としている。