中小企業の後継者問題が深刻さを増すなか、会社経営者にはショックな調査結果が舞い込んできた。M&A仲介会社のストライクによると、「ご主人が亡くなる際に最も残されて困るものは?」の問いに、40歳以上の経営者の妻の34%が「経営する会社(会社の株式)」と答えた。
家族と従業員の暮らしを支えるため、会社を経営するご主人は、楽しいこと、つらいこと、キツいこと、さまざまな出来事を乗り越え、会社経営に心血を注いできたのに、あまりに嘆かわしい結果に......。
相続問題が勃発 もめる「材料」になってしまう?
ご主人が亡くなったことで、親族間で相続問題が勃発して、もめるケースはままある。実家や財産を「受け継ぐ」人が生前に決まっていないケースが少なくないが、たとえ決まっていたとしても、相続人同士の仲が悪かったり、不動産は土地や建物などは評価や処分が難しく面倒なので押し付け合いの原因になったりする。
最近は、そこに親の介護が絡むから、話し合いもより困難を極めることに。会社経営もそんな相続時の「難題」の一つのようで、ストライクの調査からは、後継者問題などの「事業承継」が遺族の重荷になりかねないことがうかがえる。
調査によると、「ご主人がなくなる際に残してほしいものは?」の問いに、じつに89.3%の経営者の妻が「現金・預金」と答えた。
次いで「保険金」の64.1%、不動産(居住用)の49.5%、「有価証券(国債・上場株式、投資信託)」が15.5%、「経営する会社(会社の株式)」14.6%だった。
「最も残してほしいものは?」の問いにも、52.4%が「現金・預金」と答えた。「保険金」「不動産(居住用)」がともに18.4%だった。
妻をはじめ遺族にとって、「現金や預金」はわかりやすく、あまり手続きに時間がかかることもなく分けることができる。ご主人が亡くなった後の暮らしのために、すぐにでも使えるメリットは大きいようだ。
半面、「ご主人が亡くなる際に残されて困るものは?」の問いに、「経営する会社(会社の株式)」と答えた経営者の妻は37.9%で、最多。次いで、「美術品・骨とう品」の18.4%、「不動産(賃貸用)」が8.7%だった。「特になし」も37.9%、「その他」は10.7%だった。
また、「最も残されて困るものは?」は、「経営する会社(会社の株式)」が34.0%。「美術品・骨とう品」が11.7%。「特になし」が37.9%、「その他」も9.7%だった。
なるほど、こられは分配しづらそうだ。資産の「価値感」が、相続を受ける人によって異なる場合があるからだ。事業承継は、お金はもちろん、手続きも面倒。後継者問題は心情的な迷いも生じるであろうから、なかなか決められない。ご主人が、そういったことの一切合切を残して亡くなったとしたら、遺族はイヤかも。そんな思いがにじんでいるようだ。
情報源は税理士や会計士 でも、「信頼できるものない」10%超
一方、事業承継について相談できる、心強い味方になれるのは誰か――。調査では、「会社経営や株式の処分に関する情報源として考えられるものは?」の問いに、「税理士・公認会計士」と答えた経営者の妻が78.6%を占めた。
次いで、「弁護士」の25.2%、「友人・知人」の15.5%、「銀行・信託銀行」が12.6%、「インターネットで調べる」の9.7%、「商工会議所・事業引継ぎ支援センターなどの公的窓口」の8.7%と続く。
「会社経営や株式の処分に関する情報源で最も信頼できる先は?」の問いには、「税理士・公認会計士」が61.2%。次いで、「弁護士」の13.6%、「考えられるものはない/信頼できるものはない」が10.7%と続いた。
さらに「事業承継に関する情報提供を受けたことがある先は?」との問いには、「受けたことがない/信頼できた(相談したいと思った)先はない」と答えた経営者の妻が71.8%もいた。次いで「税理士・公認会計士」の23.3%。「銀行・信託銀行」の6.8%と続いた。
「最も信頼できる先は?」の問いにも、「受けたことがない/信頼できた(相談したいと思った)先はない」が、71.8%。次いで「税理士・公認会計士」の21.4%だった。
会社経営の問題である「事業承継」は、経営者のご主人が亡くなれば、それが遺族の資産の有効活用や遺産相続の問題などに切り替わる。会社経営の知識がなければ、「自分で解決する」こともままならず、そこは税理士や公認会計士などに相談するのがいいようだ。
なお調査は、2018年8月9~10日に実施した「暮らしに関するアンケート」で、40歳以上の経営者の妻を対象に聞いた。有効サンプル数は103。