ニューヨーク・タイムズが掲載した、トランプ政権高官による匿名投稿が注目を集めています(I am part of the resistance inside the Trump Administration 私はトランプ政権内部の抵抗者です)。
トランプ政権内では、誰が書いたのかと犯人探しが始まっていますし、かつてのトランプ大統領の盟友スティーブ・バノン氏は「これはクーデターだ」「国家制度に対する直接攻撃だ」と発言しています。
匿名投稿は米共和党への戒めか?
しかし、米政権内にはこうした状況があるのではないかということは、前から推測されていました。トランプ大統領が本当に好き放題した場合、大変なことになるのは目に見えています。周りの大人が、大統領を上手にコントロールしてきたのでしょう。
トランプ大統領は問題かもしれません。だが、共和党が大統領ポストを得るため、ヒラリー・クリントンという強敵を倒すため、彼が必要だったわけです。その結果、上下両院、そして大統領ポストも共和党が抑えたからこそ、歴史的な税制改革、規制緩和、軍事力強化が進みました。
ただ、どうしてこうした匿名記事が、中間選挙前という大事な時期に出てきたのか。ここがよくわかりません。一見、共和党には不利な材料です。しかし、共和党内の大人がしっかりトランプ大統領を管理するので安心して欲しい、というふうには読めます。
政権の外に発せられる言葉と、政権内は違うということです。だから、安心して共和党を支持して欲しいと。ただ、それを象徴した 「Two-track Presidency」(ツーコース大統領制)という言葉は衝撃的です。
トランプ相場がもたらした「変動幅8.83円」の現実
これでは、誰が本当の大統領なのか、さっぱりわかりません。トランプ大統領は、発言も多いし、ツィッター上でもたくさんツィートしますが、今後、彼の発言の多くは無視していいわけでもないでしょう。
先日も、日本との貿易赤字を問題視し、解決出来なければ大変なことになると大統領からツィートされましたが、気にしなくてよいのでしょうか。対中国2000億ドルの経済制裁関税第3段の発動に対して身構えていますが、政権内の「抵抗者」が発動を阻止しようと頑張っているのでしょうか。
トランプ大統領の激しい発言にも関わらず、ドル円相場は2017年も、18年も動いていません。いや、発言が激しいからこそ、動けないといえます。
どこまで実現可能性があるのか、トランプ大統領の言葉だけだと、さっぱり信頼できないからです。今年のドル円のレンジは高値113.39円、安値104.56円とわずか8.83円。過去、どんなに動かない年でも10円は動きましたし、変動相場制以降、平均年間レンジは27円、変動率で見ると16.95%です。
米政権はトランプ大統領の激しい発言があったとしても、Two-Track Presidencyであり、ちゃんとした方向に動くとわかれば、動きやすいかもしれません。今年も残すところ約3か月半ですが、このままだと過去最低レンジのままで終わります。
とはいえ、そうならないとするならば、ドル円は113.39円以上か、104.56円以下に下落することになります。
現在のドル円相場を見ていると、そのどちらもかなり離れているように見えますが、今後は米中間選挙もありますし、あと3か月半、相場は動き出すのではないかと期待しています。(志摩力男)