その61 公共施設の「外来語風」の名前 「こんなものいらない!?」(岩城元) 

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本名「職安」よりも愛称「ハローワーク」が大きな顔

   わが家の近くにも別の複合施設がある。建物の上部に「メルト」と大きく書いてあって、その下にやや小ぶりで「○○西文化会館」とある。で、メルトって何? 事務所で尋ねると、女性職員が手元の資料を見ながら「MELT 和らぐ心」といった意味です、と解説してくれた。

   英和辞典を引くと、MELTは(1)(熱や水で)溶ける、溶かす(2)気持ちを和らげる(3)気持ちが和らぐとあった。歌の名前にもある言葉だが、原子炉の炉心溶融をMELTDOWN(メルトダウン)と言う。考えようによっては、メルトは怖い名前でもある。

   以上のような話は全国どこにでもあるだろう。そして、その中でもっとも知名度が高いものの一つが「ハローワーク」ではないだろうか。公共職業安定所の愛称で、僕には意味不明ながら、もう30年近くも使われている。

   わざわざ和製英語風の愛称をつけなくても、昔からある略称の「職安」で十分だと思うのだけど、役所としては、それはおイヤらしい。ハローワークと言うと、明るい感じがして、職安が繁盛するとでも思っているのだろうか。

   でも、役所が節操もなく、外来語風、和製英語風の名前に飛びつくのは、日本人としていささか恥ずかしい。仮にも日本の役所なのだから、もう少し日本語を大切にしてほしいのである。(岩城元)

岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
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