【IEEIだより】福島レポート 復興のカタチ 日々を暮らし続ける「力」のスゴさ(越智小枝)

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防災を底辺で支えるのはマニュアルやシステムではない

   そして、もう一つ大切なことは、災害は「緊急事態」ではありますが、「すぐに終わる事態」ではない、ということです。今、被災地といえば西日本が思い浮かびます。しかし、この10年以内の大災害をみると、北九州豪雨、大分・熊本地震、鬼怒川の氾濫、岩手の台風10号、東日本大震災etc....... これらの被災地には、今でも復興の努力を続ける方々がいます。

   今の大阪に行けない。だから、他の被災地である大分や岩手に行ってみよう。それもまた災害支援の一つであり、また、将来の災害のために学ぶ、重要な防災活動であると私は思います。

   日本はほぼ全国に災害リスクがある、災害大国であり、同時に世界有数の防災大国でもあります。その日本の防災を底辺で支えるのは、マニュアルやシステムではありません。過去の災害に学び、毎日を丁寧に暮らした人々の歴史の積み重ねが今の「減災」に繋がっています。

   被災地に日常を暮らす人がいる。常にそれを忘れないことが、将来英雄を必要としない災害現場をつくるのだと私は思っています。

   被災地に行けないという理由だけで災害にかかわることを諦めず、今、目に見える支援をできないもどかしさを、日常力に転化していくことが大切なのかもしれません。

(越智小枝)

越智 小枝(おち・さえ)
1999年、東京医科歯科大学医学部卒。東京医科歯科大学膠原病・リウマチ内科。東京都立墨東病院での臨床経験を通じて公衆衛生に興味を持ち、2011年10月よりインペリアルカレッジ・ロンドン公衆衛生大学院に進学。留学決定直後に東京で東日本大震災を経験したことで災害公衆衛生に興味を持ち、相馬市の仮設健診などの活動を手伝いつつ世界保健機関(WHO)や英国のPublic Health Englandで研修を積んだ。2013年11月より相馬中央病院勤務。2017年4月より相馬中央病院非常勤医を勤めつつ東京慈恵会医科大学に勤務。
国際環境経済研究所(IEEI)http://ieei.or.jp/
2011年設立。人類共通の課題である環境と経済の両立に同じ思いを持つ幅広い分野の人たちが集まり、インターネットやイベント、地域での学校教育活動などを通じて情報を発信することや、国内外の政策などへの意見集約や提言を行うほか、自治体への協力、ひいては途上国など海外への技術移転などにも寄与する。
地球温暖化対策への羅針盤となり、人と自然の調和が取れた環境社会づくりに貢献することを目指す。理事長は、小谷勝彦氏。
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