【IEEIだより】福島レポート 復興のカタチ 日々を暮らし続ける「力」のスゴさ(越智小枝)

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30年後を見据えて、今、「毎日のご飯をつくる」

   同じことが災害急性期だけではなく、復興においても言えると思います。

   ある復興イベントで

「30年後の福島を見据えて、今やれることは何か」

について、皆で話し合っていた時のことです。政策が、イベントが、教育が...... 参加者がさまざまな長期的展望が打ち立てられるなか、ひと言、

「毎日ご飯をつくること」

と答えた方がいました。

   帰還困難区域であった小高にいち早く帰還され、駅前に花を植え続けていた、宿の女将さんです。私はこの言葉に、災害における本当の戦略を見た気がしました。

「百戦百勝は、善の善なる者にあらざるなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり」

という言葉があります。

   戦を略すことこそが戦略である、その基本に立ち返れば、戦場とならない被災地をつくることこそが復興戦略です。

「もし明日災害が起きても、自分はこの日常を守る」

   そう思いながら、未災地で毎日を生きること。それは、将来起こりえる特殊な日にもご飯をつくり、子どもを育て、あるいは作物を育てる力へとつながります。私たちは災害時に一番必要なこの「日常力」をつい見落としがちなのかもしれません。

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