シェアハウス向け融資に端を発した、融資資料の改ざんなどの不正融資問題の拡大を受けて、スルガ銀行のオーナーで会長の岡野光喜氏が辞任する意向を固めたとの報道がありました。
岡野氏は創業家出身で30年以上にわたって銀行経営を担ってきました。今回の一件が、全83か店中69か店で不正が見つかるなど、組織ぐるみの不祥事であると考えられることから、その責任をとった形になります。
トップが「黒い」と言えば黒になる
オーナー企業におけるトップの影響力は強大なものがあります。しかも、30年という長期にわたり実質的な経営権を持ってトップに君臨してきた人物は、いわゆる組織内で「天皇」と言われるような存在であり、本人の意思に関わりなく結果として絶対的な権力を持ってしまうのは疑いのないところです。
社員は皆、絶対権力者の顔色をうかがうようになるのは当たり前。よく言われる「白いものでも、トップが『黒い』と言えば黒になる」というような状況になるのも、当然の流れでしょう。
この問題は組織の私物化とは似て非なるものですが、絶対権力者が率いる組織マネジメントの「陰」の部分とでも言うべき重要な問題をはらんでいます。
権力者の存在が絶対的になっていけばいくほど、知らず知らずにイエスマンばかりが増え、自分の発言や意向がすべて正しいものとして組織内で闊歩する。中小企業を中心とした大半のオーナー企業は、このような組織管理状態にあるのが一般的ですが、株の全部または大半をオーナーが所有する私的企業であるならコンプライアンスに触れない限り、問題視されるようなことではないのかもしれません。
しかし、上場企業。しかも公共性の高い銀行となれば、話は別です。
絶対的権力者の意向を汲んで(直接指示の有無に関係なく)誤った方向に進み、株主や取引先に多大なる迷惑をかけていたという点から、今回のオーナー兼会長である岡野氏の辞任は至極当然のことであると思われます。ただ、この問題。果たして絶対的権力者の辞任で終息に向かうものなのでしょうか――。