事業を次の世代に、どう遺す、どう託すのか――。少子高齢化の進展で、事業承継が難しくなっています。大企業であれば、いざ知らず。中小・零細企業は「後継者不足」を理由に、事業の継続を断念する会社もあるほど、深刻な状況に陥っています。
70歳、80歳...... 気力、体力もそろそろ限界。
「会社経営なんてそんな、わたしに託されてもどうしようもない」
こんなことにならないよう、まずは準備をはじめましょう。弁護士で税理士の、湊信明先生が、わかりやすく説きほぐしてくれます。
連帯債務、事業承継に二の足を踏んでしまいますよね
私の父は、一代で会社を起こしましたが、そろそろ70歳となり体力も衰えはじめ、認知症も心配されるようになりました。
父や会社の役員たちは、私に父の跡を継ぐことを望んでいます。私としてもそれは嬉しいことではありますが、一つ大きな悩みがあります。それは、父の会社がいくつかの金融機関から合計2億円ほどの借り入れがあり、父がその連帯保証をしているのです。私が父の跡を継ぐと、この連帯保証を引き継がねばならない可能性が高いことです。父の会社は決して財務状況がいいわけではないので、私の妻は父の跡を継いでしまって連帯保証債務を引き継ぐことに反対しています。
こうした場合、私はどのようにしたらいいのでしょうか。
「連帯保証債務をどうするか、それは現時点で検討すべき急務です」
事業承継に際して、現経営者が負っている多額の保証債務を引き継ぐがねばならないか否かは、事業承継に応じて代表取締役の地位を引き継ぐかどうかの意思決定において大きな問題となることがあります。
相談者のケースは、現経営者が自分の父親であり、このまま放置しておくと経営者である父親が死亡した場合には、相続放棄をしない限り連帯保証債務を相続によって包括承継することになってしまいます。また、この父親は認知症の心配もあるということですから、認知症になってしまって判断能力を失うと、保証債務を解除してもらうための交渉を金融機関と話し合うことも困難になってしまいます。
多くの中小企業では、金融機関からの借り入れに際して、代表者が連帯保証しているので、円滑な事業承継を実現するためにも早くから経営者の連帯保証をどうするかについて、検討しておく必要があります。
相談者の場合には、すでに急務中の急務という状況に立ち入っていると言ってよいでしょう。