米国の一人勝ちはいつまで続くのか(志摩力男)

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米国株の強さと貿易戦争の関係

   それでも米国株が堅調ということは、どういう要因が考えられるのでしょうか――。

   私自身、答えは意外に簡単なところにあるのではないかと思っています。まず、2017年に実現したトランプ税制改革の影響です。法人税が35%から21%へと劇的に引き下げられたので、その分だけ米国企業の業績が改善しました。

   そしてもう一つ、影響が見逃せないのが、いわゆる「リパトリ減税」です。

   これは米国企業が海外で得た利益を米国に還流させる際、これまでは35%の法人税がかかっていました。そのため、米国企業は高い税金を回避するために海外に利益を滞留させていましたが、これが極めて低い税率で米国に還流させることができるようになりました。

   米国企業の海外滞留利益は約3兆ドル(約330兆円)で、これが米国に戻ってきます。その一方で、企業がこの金額をどのように使うかは、なかなか難しい問題です。一部は給与、一部は設備投資や研究開発費に回りますが、それでも膨大な使い切れない金額が残ります。その時、米企業経営者ならば、当然選択肢の一番に来るのは「自社株買い」です。

   今年、この自社株買いは50兆円を超えると想定されていましたが、一部には100兆円近い規模になるのではないかとの市場レポートもあります。これだけの金額が米国の株式市場に流れるとなると、むしろ株価が下がるのが難しいとも言えます。

   このところ、どんな悪材料が出ても米国株がしっかりしているのは、貿易戦争で米国が勝つからとか、トランプ政策が正しいから、という理由ではなく、単に自社株買いが大量にあるから強いのではないでしょうか。

   ただ、他の資産が下落している時に、米国株だけが上昇しているという状況には違和感もあります。この自社株買いが一巡したとき、米国株の調整が始まるのでしょう。そうなると、おそらくは2019年以降になるのではないかと推測しております。(志摩力男)

志摩力男(しま・りきお)
トレーダー
慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券など大手金融機関でプロップトレーダー、その後香港でマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現役トレーダーとして活躍中。
最近はトレーディング以外にも、メルマガやセミナー、講演会などで個人投資家をサポートする活動を開始。週刊東洋経済やマネーポストなど、ビジネス・マネー関連メディアにも寄稿する。
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