ビジネスマナー研修では必ず言葉遣いについて習うと思います。「正しい敬語の使い方」「接遇用語」「ビジネスにふさわしい表現」など...... 面倒くさいなぁ、難しいなぁと感じながらも社会人として信頼される言葉遣いを皆さん心がけていることでしょう。
しかし、お客様との会話では慎重に言葉を選んでいても、社内での会話や部下の指導において乱暴な言葉を使ってしまうことはありませんか?
損害賠償請求はアナタにも降りかかる
「もうええ加減にせえ、ほんま。」
「辞めてしまえ。」
「(担当業務は)もう、性格的に合わんのじゃと思う。」
「お前はA(別の社員)以下だ」
「あほじゃねんかな、もう。普通じゃねえわ。あほうじゃ、そら。」
「何をとぼけたこと言いよんだ」
これらの発言はある金融機関のパワハラ裁判で明らかになった上司から部下への言葉です。この裁判では「業務に必要な範囲」を超えた叱責であるとして、金融機関と上司に対して慰謝料の支払いを命じる判決が言い渡されました(2012年4月19日岡山地方裁判所判決、労働判例1051号28頁)。
他の事件でも
「失敗したらお前の責任だからな」
「普通じゃねぇ!」
「もう一度幼稚園からやり直せ」
これらもパワハラ認定されています。
こうしたパワハラ裁判ですが、損害賠償請求されても「会社が払えば済むでしょ」と思う方もいるかもしれません。ところが、じつは会社だけでなく、パワハラを行った本人も支払う義務を負わされるリスクがあります。
言葉遣いはその人の知性と品位の表れ
パワハラ裁判の損害賠償額は、時には数千万円以上に及ぶことが珍しくありません。
部下を指導する立場の年代は、仕事だけでなく家庭でのストレスも重なる時期です。頭ではいけないとわかっていても、部下がミスを繰り返す、期待どおりの働きをしてくれない場面が続くとイライラして感情的な言動をしてしまうことがあります。
そんな様子を部下や周囲は冷静に見ており「パワハラでは?」と思うわけです。
パワハラ認定されると、自身の会社での立場が悪くなるだけでなく、金銭的負担も生じます。住宅ローンや教育費など、何かとお金がかかる時期に予定外の支出が生じるわけですから、家族関係が悪化する可能性もあります。ひと度、口から出てしまった言葉を回収するのは困難です。
「どこまでが業務で必要な範囲か」「NGワードは何か」を意識した言葉選びが大切です。
言葉遣いはその人の知性と品位の表れとも言われます。美しい言葉を使うと人間関係もよくなります。丁寧な言葉遣いでパワハラ防止に努めましょう。(篠原あかね)