データイノベーション時代はこう生きろ! 「自分データ」の活用でよりパワフルになれる

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   個人データ(パーソナルデータ)というと、個人情報の流出や悪用問題が騒がれて、保護の対象というイメージを持つ人が少なくない。しかし現在、個人データを大いに活用することが自分自身のキャリアアップにつながるばかりか、医療や教育の分野、AIの発展などビジネス界に一大イノベーションを起こすとして注目されている。

   私たちはパーソナルデータをどう活用して、自分のライフスタイルを改革すればよいのか。また、企業や政府はそれらのビッグデータを利用して成長につなげていくにはどういう仕組みを作っていけばよいのか。一般社団法人働き方改革コンソーシアム(CESS)が2018年6月28日、東京・日本橋で開いた「デジタルイノベーション実現会議」シンポジウムの議論を紹介する。

  • 橋田さんと今川さんのセッション
    橋田さんと今川さんのセッション
  • 橋田さんと今川さんのセッション

データ活用で個人はキャリアアップ、企業は成長に

   セッションのテーマは「セルフマネジメント時代のデジタルイノベーションとライフスタイル変革」。冒頭、司会の浅野雅之CESS理事がこう説明した。

「自分自身で自分のデータを管理することで、日常をパワフルに過ごせる時代がくるのです。健康管理に役立つだけでなく、セルフキャリアを積んでいくことにも利用できる。そして企業もまた成長していくのです」

   最初に登壇したのは橋田浩一・東京大学教授で、「個人データの活用と保護が今日ほど重要になった時代はありません。個人にとってはパーソナルデータの活用がキャリアアップにつながるし、企業にとっても個人データの活用が大きなビジネスチャンスになるのです」と強調した。

   その例としてあげたのが、多くの分野に広がっているAI。そもそもAIの運用には個人データが必要。なぜならAIサービスの相手のほとんどが個人だからだ。

「そのため、AIの運用と開発の両方の基盤として、個人データが不可欠です。しかし個人個人のデータを最も網羅的に収集できるのは、グーグルでもアマゾンでもなく、本人です。そして、個人データを活用するには原則として本人の同意が必要です」
「日本はまたガラパゴスになってしまう」という橋田浩一さん
「日本はまたガラパゴスになってしまう」という橋田浩一さん

   今年(2018年)5月25日、個人データの保護と活用の面で画期的な制度がスタートした。EU(欧州連合)の「一般データ保護規則」(GDPR)だ。GDPRで橋田さんが着目するのは第20条の「データポータビリティ(持ち運び可能)権」。あるサービスの利用者が自分の個人データを自由に持ち運ぶことができる権利で、事業者は本人に個人データの電子的コピーを渡さなくてはならない。違反者には最高で、世界売上高の4%か2000万ユーロ(約26億円)のうち、いずれか高い方という超巨額の制裁金が科せられる。これによって、個人はいろいろな事業者が持っている自分のデータを自由に使えるようになる。

   「EU圏内で活動する、すべての企業が対象になるので、これが世界標準になりつつあります。中国もEUと同様の技術標準を採用しました。日本も今のままではまたガラパゴスになってしまう心配があります」と橋田さんは指摘する。

   このようにパーソナルデータを自分の意思でさまざまな事業者に提供し、よりよいサービスを受け取ろうというのがこれからの動きだ。たとえば、医療の分野。診療所の場合、診療報酬の点数は外来が低くなり、在宅が高くなっている。在宅診療を増やさないと診療所はつぶれてしまうが、医師1人の診療所がほとんどで、在宅医療の条件である24時間365日の対応は不可能だ。しかし、数か所の診療所がグループをつくり、患者のデータを共有すれば在宅にも対応できる。

「患者のデータを医療機関同士が共有すれば、いい医療ができることは医療者全員が知っていました。ところがデータを共有しても儲からないのでやってこなかった。今後はデータを共有しないと医療機関がつぶれる時代になります。厚労省もデータの共有を推進しています」
姉妹サイト