いい製品をつくれば儲かるビジネスは通用しなくなった
竹中さん「中畑さん、日本の成長戦略を担う大企業の立場からいかがですか」
中畑英信さん「日立製作所は2008年に7800億円の大赤字を出しました。その経験から働き方改革をやらないと世界に負けることがよくわかりました。
日立では、日本に16万人、海外68か国に14万人の合計30万人の従業員がいます。私は毎日スカイプで外国人トップと話していますが、彼らとの間で働き方のギャップを感じます。彼らと一体になるのに一番大切なのは、成果主義です。だから、高度プロフェッショナル制度の導入が決まったのは非常にありがたいです」
竹中さん「産業界でイノベーションを進めるには、企業の新陳代謝が必要です。前回のフォーラム(2018年2月20日)で日本野球機構の斉藤惇コミッショナーが、東芝の凋落は若手技術者の発明を経営者が理解せず、海外メーカーに渡ったことが原因だと指摘した。経営者と社員の世代間ギャップによって、若手のアイデアを経営者がつぶしてしまう側面があるのではないですか?」
中畑さん「それはあります。事業自体が大きく変わってきています。我々の世代がやってきた仕事は、強くていい製品をつくり、取引先に届けることでした。現在は、『製品がよければ勝てる』というビジネスはもう終わりました。
では、何が求められているか。社会の課題、お客さんの課題、しかも将来の課題......。それらを探してきて、日立の技術を使ってサービスで解決する。経営者がそこの理解を変えないと、若い世代をつぶしてしまいます」
竹中さん「そういう風に日本の大企業が変わりますか?」
中畑さん「変わらないと、私たち、死にます。7700億円の赤字で痛い思いをしたのは、あまりに製品の強さに頼り過ぎ、投資を注ぎ込んだからです」
竹中さん「世耕さん、『データ駆動型社会』になるとのお話がありましたが、今年1月のダボス会議でもメルケル独首相が『これからの経済成長はビッグデータの戦いになる』と発言していました。しかし、ビッグデータはキャッシュレスにならないと集まらない。アリババの人と話すと、アリババ1社で年間300兆円ものキャッシュレス決済をしているそうです。キャッシュレスの比率は韓国9割、北欧7~8割、中国6割、米国5割、そして日本は2割で非常に遅れている。大丈夫ですか?」