トルコ危機は「リラ買い」の好機なのか? 市場は「慎重な楽観主義」だが......(小田切尚登)

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アルゼンチン、UAE、フィリピンは「ひとまとめ」

   ここで、新興国(エマージング)市場についておさらいしておこう。

   エマージング投資はリスクが高めであり、中上級者向けの投資手法と言ってよい。先進国よりも信用力が劣るのは当然であるが、加えて市場が小さく不安定であることが特徴である。

   先進国の年金などの巨大な資金が新興国市場に投下されると「池に放たれたクジラ」ような状況となり、容易には抜け出せない状況になってしまう恐れがある。加えて政治的に不安定な国も多く、今回のように思いもよらぬ事態が生じる可能性がつきまとう。

   今のように円やドルの利回りが非常に低い時代には目先の利回りが高い新興国投資は一見魅力的に映るが、その分リスクも高いことを肝に銘じる必要がある。

   翻って、今回の問題はトルコという国の個別の事象である。トルコの金融市場自体は大した規模ではなく、トルコの株式市場の時価総額は世界全体の0.1%よりもずっと小さい。本来ならば日本の我々が心配するべき問題に発展するような話ではない。

   しかし、今回は新興国市場全体を揺るがす事態になった。トルコ問題の余波を受けて、アルゼンチンペソはトルコリラ以上に下がったし、UAEディルハム、フィリピンペソ、インドネシアルピアなども軒並み15%超(ドル建てで計算)の下落となっている。これらの国とトルコとはほとんど関係がないのに、である。

   これはひとえに世界の投資家がエマージングをひとまとめに見ているために他ならない。国ごとの差別化がなされず、全体をまとめて売る・買うという行動がなされているのだ。

   これは望ましい状況ではないが、現実がそうなので仕方がない。

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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