日本の労働組合は「カイシャの第二人事部」
連合というのは、しょせんは個々の企業別労組の寄り合いにすぎない。
連合の会長というのは、その寄り合いの名誉会長ポストくらいの重さしかなくて、労組全体の意見を集約したり、指示して従わせたりするなんてことは、どだい無理な話なのだ。だから、エッジの効いた話をさせようとすると「暖簾に腕押し」状態にしかならないのだ。
たとえるなら、戦国期の室町将軍くらいの位置づけである。室町将軍だから、ちょっとでも傘下労組の気に障ることを言うと本当にタマを取られかねないことになる。 昨年、連合執行部が政府の進める働き方改革に含まれている高度プロフェッショナル制度を容認する姿勢を示したところ、傘下の労組から強い反対を受け、撤回に追い込まれたことがあった。
残業自粛で減った残業代を別の形で取り戻すためにも必要な制度なのだが、朝三暮四レベルのおつむの末端労組には理解できなかったのだろう。あのまま執行部が強行していたら執行部の責任問題となっていたはずだ。
そういえば、前々会長の高木剛氏も、会長辞任前に月刊誌に寄稿し、「既得権問題」や連合の寄り合い体質について言及。苦しい胸の内を語っている。
では、日本の労働組合とはなにか――。簡単に言えば「従業員の福利厚生を担当する第二人事部」というのが正しいだろう。
一応、従業員寄りとはいえ、しょせんは第二人事部だから、経営側と喧嘩しないで協調する。会社のために三六協定を結んで月45時間を超えて残業できるように取り決める。組合員の全国転勤も黙認する。そして、会社のために非正規雇用を積極活用し、不況が来たら派遣を切る。
まあ、あえてそのオンリーワンの役割を一つ挙げるとすれば、「格差とか過労死の問題がクローズアップされた際にメディアに労働者代表として出てきて、矛先が会社や終身雇用制度に向かないようにほどほどにガス抜きする」ことくらいだ。
だから、連合の中の人がメディアに出ていたら「ああ、ガス抜き工事やってるな」と、泣きながら手を振ってあげるといいだろう。(城繁幸)