「報復措置」でわかる! 起業に向くか否かの分かれ道
Tさんは黙っていましたが、私が彼の報復案に同調してくれると思っていたのか、意外な表情と言うより、明らかに不満そうな顔を浮かべ、納得がいかない様子がありありとうかがわれました。
私は、これ以上この話をしても説教がましくなるだけで意味がないと思ったので、ここで話を終わりにしました。果たして彼は、私の話を聞いてどう対応するのでしょうか。
目には目を、歯に歯を、自分が被害を被ったなら仕返しをしたくなる、そんなバイタリティ溢れる性格ゆえTさんは独立起業したのでしょう。
しかし、仮に自分が被害を被ったとしても、なぜそうなったのかを考えずに短絡的に「やられたからやり返す」のは、経営者としては決してほめられた行動ではないでしょう。経営者として、まずやるべきは、自分が受けた仕打ちは相手が事実関係を十分に理解したうえでの行動なのか、また相手の状況をこちらは十分わかっているかを確認し、そこが明確でないなら、コミュニケーションを密にして相互理解を深めて善後策を考える、そんな対応が必要なのではないかと思います。
この季節だからこそ、なおさら思うのは、どんな時でも報復措置を最優先するのは国を戦争へ導いた過去のリーダーたちの愚かな選択と同じであると思います。Tさんが、果たしてそこを理解できるか否か、彼が起業に向くか否かの分かれ道であるように思います。(大関暁夫)