これまでサブカルチャーの一つとされた「アニメ」が、映像文化としての地位を確立してきたことで、アニメ制作企業の2017年の収入高の合計が2000億円を超え、過去最高を更新した。帝国データバンクが2018年8月10日に発表した「アニメ制作企業の経営実態調査(2018年)」で、わかった。
2017年をみると、テレビアニメの「けものフレンズ」が流行語大賞にノミネートされ、また劇場版アニメも「君の名は。」が出た前年には及ばないまでも、コンスタントにヒット作が出た。最近ではアニメの舞台となった地域への「聖地巡礼」が人気で、観光客増による経済波及効果が見込めることもある。
アニメが地域経済の活性化策の一つとして無視できない存在となりつつある。
好調な要因は作品増とライセンス収入
帝国データバンクによると、2018年7月時点でアニメ制作企業は255 社。本社の所在地別にみると、東京都が228社で全体の89.4%を占める。
なかでも182社が東京23区内で、そのうちの杉並区が52社、練馬区が34社と2区で47.3%を占める。23区外では、武蔵野市が14社、西東京市が9社と多い。これは、東映アニメーションやトムス・エンタテインメント(いずれも、中野区)などのアニメ草創期を築いた企業が集積していることに加え、「近接性がビジネス面で有利」となることから、各工程を担う専門スタジオが近隣に立地することも関係している、とみている。
また、企業の規模別では、収入高、資本金、従業員数ともに中・小規模の企業が過半を占めた。設立年別では2000年以降に設立された企業が150社を占め、全体の約6割を業歴が浅い新興制作企業が占めた。
そうしたアニメ制作企業の2017年(1月期~12月期決算)の収入高の合計は、2037億2100万円で、調査開始後初めて2000億円を突破した。また、1社あたりの平均収入高は8億800万円で、2010年以来7年ぶりに8億円台に回復した。
前年と比べて、収入高が「増収」だった企業は39.6%となり、3年ぶりに前年を上回った。利益でも「増益」だった企業は54.9%で、過去5年間で最高となった。
収入が増えた要因は二つ。帝国データバンクは、「一つは作品数が増えたこと。もう一つは、元受けとなっているアニメ制作会社が映画などの製作委員会に出資して、制作収入に加えて、キャラクターグッズの販売やインターネットなどへの動画配信などのライセンス収入を得るようになった」と、説明する。
一方、アニメ制作企業の倒産(負債1000万円以上)、休廃業・解散件数は6件。また、18 年1~7月時点に3 社の倒産(前年同期は2 件)が判明している。
出典:帝国データバンク