暴落したトルコリラ、「本来買うべきではなかった」通貨かも......(志摩力男)

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   トルコリラが暴落し、話題を集めています。

   バブル崩壊以降、政府や日本銀行による景気刺激策のため、日本人はずっとゼロに近い金利を強いられてきました。それゆえ、日本の個人投資家の間では、どうしても南アフリカランドやトルコリラ、メキシコペソといった高金利通貨が人気となり、関心を集めます。

  • トルコリラ、どうなる?
    トルコリラ、どうなる?
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海外は理解できない「ミセスワタナベ」の新興国通貨への投資

   私も、コラムなどで高金利通貨について書くと、ドルやユーロといった主要通貨よりも反響が大きいなと実感します。しかし、本来こうした新興国通貨のトレードは非常に難しいものがあります。

   外資系の銀行や証券会社などでは、こうした新興国通貨のトレードは「エマージング・マーケット・デスク」と呼ばれる専任のトレーダーが集まる部署でトレードされています。

   彼らは為替のみならず、債券や時には株式なども組み合わせ、複雑なポートフォリオを運用しているのです。もちろん、プロですから、彼らのそのマーケット、対象国に関する知識洞察はスゴイ! 歴史的経緯、政治、法制度などを知り尽くしていますし、地場のメインプレーヤーや中央銀行ともコミュニケーションとり、時には政府要人や国会議員らにもアクセスを持っています。

   そうした彼らが、奇異に感じるのが、高金利通貨に集中する日本人、「ミセススワタナベ」のポジションです。なぜ、これほどリスクのあるマーケットに、一般の個人が参加しているのか、今一つ理解できないのです。

   ただ、だからと言って、参加すべきでないと言っているのではありません。大いに参加すべきだと思います。しかし、それは十分に研究して、理解した後でのことです。

   なかでも、トルコリラは問題でした。あまりはっきり書くと、営業努力をされている方々に迷惑がかかるのではないかと思うところもありましたが、見た目の金利などの表層的な解説ばかりが横行しているので、最低限書くべきことは書いてきたつもりです。

その通貨、実質金利はプラスですか?

   まず、見た目の金利(=名目金利)やスワップポイントのセールスばかりですが、本当の金利(=実質金利)が本当はどのぐらいなのか、それを知らなければなりません。

   すなわち、見た目の金利からインフレ率を引かなければなりません。新興国はインフレ率が高いところが多いので、実質金利の計算は必要最低限です。

   トルコは、歴史的にインフレ率が高い。いくら見た目の金利が高くても、本当の金利は常に「マイナス」でした。日本は見た目の金利はずっとゼロですが、インフレ率がマイナスの時も多く、じつは本当の金利はずっと「プラス」でした。

   金利を求めてトルコに投資したのに、本当は日本のほうが高かった。これは笑いごとではありません。

   新興国通貨に投資するときは、実質金利が十分大きくプラスであること。これは鉄則と言えるでしょう。

   次に、過去の為替レートの歴史を知ることです。為替なので、上がったり下がったりします。しかし、トルコリラの歴史はスゴイ。ほぼ、ずっと右肩下がりなのです。

   FX会社のアプリなどで見ることができる過去のチャートは、せいぜい5~10年。しかし、それでは短い。できるだけ長い期間チェックすべきです。トルコリラは、2015年初頭には50円でした。しかし、リーマンショック前2007年には100円近いレベルで取引されていましたし、その7年前の2000年の頃は200円近い数字でした。デノミがあったこともあり、1995年は2000円、1990年代には6万円台、1985年には50万円、1980年には250万円でした。

   これを見てわかるように、トルコリラはただただ下げ続けた通貨であり、「底」はないのです。それを知ると、トルコリラを買いたいと思うでしょうか。僕は思わないです。

   もちろん、トルコにはトルコのよさがあります。経済規模も大きく、GDPのランキングでは世界の17位です。人口構成も悪くありません。ただ、買うには、まず......

(1) 中央銀行の独立性が十分に担保されること
(2) 必要なだけ金利を引き上げられること
(3) 対米関係をよくすること などがあります。

   今のトルコは、景気刺激策より景気をわざと軟化させる必要があります。また、国民は受け入れがたいでしょうが、景気を少しスローダウンして外貨不足に対応しないといけないと思います。そういった措置が見えてから買っても、遅くはないのではないでしょうか。

(志摩力男)

志摩力男(しま・りきお)
トレーダー
慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券など大手金融機関でプロップトレーダー、その後香港でマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現役トレーダーとして活躍中。
最近はトレーディング以外にも、メルマガやセミナー、講演会などで個人投資家をサポートする活動を開始。週刊東洋経済やマネーポストなど、ビジネス・マネー関連メディアにも寄稿する。
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