父・勝久氏「親って本当にバカ」
もう一つ、親子であるという遠慮のなさが、ややもすると創業者と後継者の間に決定的な溝を作ってしまいがちであることも、知っておいていいでしょう。
親子はたとえ関係を断絶しようとも、いいにつけ悪いにつけ、決して断ち切れない血のつながりが残ります。他人同士の間では無意識に働く相手に対する遠慮や、お互いの侵されざる領域の存在意識などから、相手を徹底的に打ちのめしたりしない、決定的な断絶を避ける力が働きます。
しかし、親子という特別な血縁関係では、徹底的にやりあっても血の繋がりは決して消えることがないという無意識の甘えによって、つい決定打を放ってしまうことがあるのです。
そんな流れで「社史」を軽ろんじるだけでなく、「社史」に目をくれることもなく破り捨ててしまう。成功した創業者とその後継者、親子間における事業承継の難しさはこんなところに存在しています。
大塚家具の「社史」には、恐らくその歴史を支えてきた多くの支援者や大塚家具ファンのコアな顧客層が存在していることでしょう。先代と後継、どちらのやり方が全面的に正しく、どちらのやり方が決定的に間違っているということではなく、経営の難局に相対した場面においては「社史」を読み返しながらヒントを得つつ、新しい考え方ややり方に取り組んでいく、そんな姿勢が危機打開の糸口を作ってくれるのではないかと思います。
今回の騒動を受けて、父・勝久氏はメディアを通じて、「親って本当にバカ。久美子がかわいそう。あちらから相談してくれるなら、いつでも相談にのる」と明言しています。
親子だからこそ、絶対的な断絶を経てもまた修復も可能だという、そんな他人同士の関係では考えられない展開もあるのです。今、久美子社長が「社史」の重要性に気がついて、主体的に歩み寄れるか否かに、大塚家具の運命がかかっているように思います。(大関暁夫)