暗中模索...... 企業の高齢者の戦力化
とはいえ、大手小売業の人事担当者は「現在は高齢者雇用が緒に就いたばかりであり、賃金体系も評価体系も暗中模索の段階。そもそも、定年延長なのか、再雇用なのかで考え方も、賃金体系も評価体系も違ってくるだろう。高齢者をどのように戦力化していくのかという基本が固まっていない段階だ」と、暗中模索だ。
「たとえば、少子高齢化が進み、働き手不足から職場は高齢者が中心となれば、必然的に定年が延長されることになるだろう。この場合には、現状の賃金体系や評価体系を手直しすればよいが、現状では、現役社員と高齢者では別の賃金体系や評価体系を作らざるを得ないだろう」と大手銀行の人事担当者は言う。
一つの方法としては、高齢者に対しては賃金は抑制して、現役社員との格差を設けるが、評価によってストックオプションを付与し、自社株やその配当を報酬として付与したり、あるいは近年話題となっている株式給付信託を使った自社株報酬制度で、高齢者の報酬を別建てにするなどの案も聞かれる。
いずれにしても、60歳定年以降の雇用者をどのように処遇し、戦力としていくのかは、なかなか難しい。ただ、高齢者雇用の問題点は、民間にだけあるのではない。国の制度では、致命的とも言える欠陥がある。高齢者を十分な労働力として使い、豊かな老後を過ごすためにも、この欠陥は早急に改善しなければならない。
次回は、高齢者雇用に関連する国の制度上の問題点を指摘する。(鷲尾香一)
(つづく)