2018年3月に友人と、スペインを旅行してきた。過去の歴史遺産を見学する楽しみを満喫することができた。
スペインを旅行して感じたことは、日本と比べて信号機や道路標識が少なく、街並みが整然として見えたこと。印象的だったのは、高速道路を降りた先に「環状交差点」が設置されていたことだ。
免許証の更新時に、なぜ今、「環状交差点」?
2018年7月8日、夜7時45分から、テレビ東京で「池上彰が選ぶ、今知っておきたい衝撃の小さなニュース」が放映されていた。「全国で信号機が誤作動」というテーマだった。これがタイトルどおり、たしかに衝撃的だった。
誤作動の事例として、全色一斉点滅、両方向どちらも青信号などが放映されていた。
原因は、1960~1970年代の高度成長期に自動車が増加し、交通事故も増えた。それに伴い各地に大量の信号機が設置されるようになった。
現在、信号機は全国に21万機あり、その2割が更新期限(19年)を過ぎているという。その結果、制御器が誤作動し、異常な点灯を起こす危険性があるそうだ。
更新期限を過ぎた信号機の交換に充てる予算の不足が原因のようだが、その解決策の一つとして、番組では2007年オランダのドラハテン(人口4万5000人)で、実験的に信号機をほぼすべて撤去した事例を取り上げていた。その後の4年間で、36件あった死亡事故が2件に減少。また、クルマが交差点を通過する時間が平均で20秒速くなった。
信号機に変わり設置されたのが、「環状交差点」だ。
この環状交差点の出現で、欧州の一部では、信号機を減らす動きがでているそうで、番組によると日本でも全国の約75か所に設置されているという。
思い出した。一昨年末、免許証の更新手続きに行った時に「環状交差点」の説明があった。
このときは、なぜ今、「環状交差点」なのかと思ったので、記憶していた。
そんなことで、スペインからの帰国後、さっそく信号機メーカーを調べた。会社四季報 最新銘柄レポート(2018年7月11日号)に3大信号機メーカーのトップ、「日本信号」があった。
駅の自動券売機や自動改札機、ホームドアも日本信号だった!
会社四季報(2018年7月11日号)によると、日本信号は、鉄道信号や交通信号で首位。独立系で公・民営鉄道とは幅広く取引がある。駅務自動化装置や駐車場システムなどの情報制御事業でも有力とある。信号機メーカーが、駅には欠かせない自動券売機や自動清算機、自動改札機、軽量型ホームドアをつくったり、空き地を有効活用して増えている駐車場のシステムをつくったりしていることには、少々意外に思ったが、「情報制御」技術を生かしているのだから、すぐに腑に落ちた。
さらに、世界で主流化しつつある無線信号も積極的に展開。非接触ICタグや超小型光デバイス関連の新規事業に注力しているとされる。
今期の事業は、柱の信号システムがJRや私鉄向けの信号保安装置の更新需要を取り込み、回復を予想。「今期予想経常利益は136.9%増益見込み」とあった。また、海外事業も順調のようだ。
おそらく、多くのドライバーが常々感じていると思うのだが、日本では信号機を含む交通関連標識が多すぎるのではないか。環状交差点の増設や、信号機や道路標示などが削減できれば、ドライバーは運転しやすくなり、その結果、事故の減少につながると考えられる。そういえば、最近わが家の近くでも、赤の点滅信号がなくなっていることに気がついた。過剰な信号機は、撤去されつつあるのかもしれない。
環状交差点が世界の潮流になれば、日本でも今後「交通信号」の需要が減るかもしれない。
とはいえ、日本信号には「鉄道信号」がある。加えて、環状交差点がこのまま一気に普及するとは考えづらい。都市部は交通量が多く、また交差点が多いうえに狭く、交差点にぐるりと円を描けるほどの広さが必ずしも確保できない。ある場所は信号機、ある場所は環状交差点では、ドライバーがかえって混乱する懸念もある。
そう考えると、これはカタい投資先ではないのか――。日本信号の2018年8月2日の株価は1093円。用意する投資金額も、驚くほどではない。また、過去5年の株価チャートを見ると1000~1300円のレンジで推移している。
してみると、大きな利益を得ることは難しいが、この堅実さは評価できると読んだ。(石井治彦)
2018年8月2日現在 保有ゼロ
年初来高値 2018/01/09 1234円00銭
年初来安値 2018/02/14 904円00銭
直近 終値 2018/08/02 1093円00銭