内需盛り上がらず、方向性は「円安」
ドル円上昇の障害は二つです。一つは、ドル上昇を嫌うトランプ米大統領です。米財務省も円をかなり割安とは見ています(米為替報告書より)。もう一つは、コンスタントに続く日本の経常黒字です。
市場関係者の中には、米国は意のままに為替相場を動かすことができると考えている人たちがかなりいます。プラザ合意以降のドル安円高相場、米要人のひと言で相場が動いてきた歴史を知っているからです。
しかし、金融を引き締めしながら、ドル安を望むことは矛盾しています。そして表向き、政治的に為替を操作してはいけないことになっています。日本は防衛政策を米国に依存しているという現実があります。それゆえ、米国の意向を過度に「忖度」してしまうのかも知れませんが、今回の貿易戦争、米国が直接相手するのは中国であり、日本では(おそらく)ありません。
もう一つの経常収支の黒字、こちらはより本質的な問題です。しかも黒字は年々大きくなっており、今年もおそらく20兆円を超える金額になるでしょう。しかし、20兆円以上の金額が外に出れば円安になるということです。企業が外への投資に積極的になっている今、それは結構低いハードルだと思います。
ドルの上昇は、一たんは頓挫したように見えますが、日本の金利はずっとこの先「ゼロ」です。金利が上昇するとすれば、インフレが上昇するときでしょうが、内需が盛り上がるようには見えない今、円安がかなり進行するという経路しか見当たりません。円安がかなり進み、どうしても金利を上げて止めなければならない、そうした瞬間が来るまで日本の金利は低いままでしょう。
やはり今後、円安相場がやって来るように見えます。(志摩力男)