2018年7月は「猛暑」「酷暑」そして「もはや災害」とまで言われる暑さ続きだった。
2年後の2020年7月24日から8月9日までの東京五輪も、そんな暑さの中で行われるのだろうか――。
太陽ギンギンギラギラ、大変なコース
もし、同じような暑さだったら、影響が一番心配されるのはマラソンだが、その日程が2018年7月18日、国際オリンピック委員会(IOC)で承認された。女子が8月2日、男子が同9日、ともに新国立競技場発着、午前7時開始である。暑さを考えて、それまでの予定より開始を30分、早めたそうだ。
しかし、マラソンは42.195キロの長丁場を2時間以上かけて走る過酷な競争である。開始時の午前7時はまだいくらか涼しくても、コース中盤から気温が35度を超える可能性もあるだろう。
とくに、33キロ地点である皇居前の内堀通りは「太陽を遮るものが何もない。太陽ギンギンギラギラ、大変なコースだ」と、かつてマラソン選手だった瀬古利彦さんが評している。選手の命にもかかわるのではないか。
選手だけではなく、観客のことも心配である。わざわざ、酷暑の中を熱中症と戦いながら、選手を応援するのだから、それは決死の覚悟である。
出でよ!?「マラソンに参加しない」有力選手
どうして、よりによってこんな時期に東京五輪をやるのか。それは「簡単な話」で、IOCが夏季五輪の開催日を7月15日から8月31日までに設定するよう求めているからだ。
じゃあ、なんで、IOCはそんな時期を選んだのか。それも「簡単な話」で、巨額の放映権料を払う米国のNBCなど欧米のテレビ局の都合に合わせているからだ。たとえば、秋はアメリカンフットボールのシーズンなので、NBCにとっては五輪などがあっては迷惑なのだろう。
だから、東京五輪を中止にでもしない限り、開催時期などの「大枠」は認めざるを得ないけど、マラソンの過酷さをもう少し和らげる方法もあるだろう。
たとえば、開始時刻を2時間早くして午前5時、あるいは夜にして午後7時、8時にはできないか。欧米のテレビ局の放送時間との関係もあるだろうが、まずは「アスリート第一」である。
あるいはマラソン、そして同じように過酷な競歩は、開催地を東京より涼しい北海道に持っていけないか、考えられる手立てはいくつかあるはずだ。
2008年の北京五輪のとき、マラソンの金メダル最有力候補と目されていたエチオピアのハイレ・ゲブレセラシェ選手が北京の大気汚染を嫌ってマラソンに出場せず、1万メートルの参加に切り替えた。
ただ、五輪の間は北京の空も青く晴れ、彼を後悔させたそうだが、この選手にならって、開始時刻を変えない限り、あるいは、開催地を変えない限り、「マラソンには参加しない」と言ってくれる有力な選手はいないものだろうか。そんな声が続出すれば、さすがのIOCも対応を迫られるかもしれない。(岩城元)