「大事な母の形見が......」「こんなはずじゃなかった!」――。老いた親や親戚を失った傷心に追い討ちをかける「遺品整理」トラブルがここ数年急増している。
近年、核家族化の進展にともない、離れて暮らす親や親戚が亡くなると、その地域の遺品整理サービス業者に、故人の所有物の整理や処分を依頼するケースが多くなっており、料金や作業内容に関するトラブルが問題になっている。
国民生活センターは2018年7月19日、「遺品整理サービスに依頼するときは、契約内容をしっかり確認して、慎重に業者を選んで!」と呼びかけた。
「大事な形見を処分された」「法外な料金を請求」
遺品整理とは、故人の持ち物を形見分けする物と再利用する物、廃棄する物に分別し、片づけていくことだ。
従来、遺族が行っていたが、遠方に住んでいることや作業が大変ことなどを理由に、遺品整理サービス業者に依頼する人が増えている。業者も「街の便利屋」から、専門的な家財整理業者までさまざま。処分品の不法投棄や法外な料金の請求などが社会問題になったため、遺品整理業界の健全化を目的として、民間資格の「遺品整理士」制度が2011年に設立された。現在、全国に2万人を超える遺品整理士がいるという。
国民生活センターによると、「高額な追加料金が要求された」「残してほしい遺品が処分された」といった遺品整理サービスをめぐる相談が、2010年代から増え始め、2013年~17年の5年間に全国で491件寄せられた。
たとえば、こんな事例だ。
【事例1】見積もりの際にせかされて契約したが、作業が始まらない。
兄が亡くなり、スマートフォンで検索した遺品整理事業者に兄宅に来てもらった。夫からその場では契約するなと言われたが、事業者から「今日決めると安くなる」「早く決めたほうが早く始められる」とせかされ、32万円で契約した。「ポストに鍵を入れておけばすぐ始める」と言ったが、数日たっても作業が始まらないので、電話すると「作業日はまだ決まっていない」と言われた。「賃貸の解約をしないといけないので早くしてほしい」と伝えたが、始める様子がない。(兵庫県・60歳代女性)
いつから始めるか、口約束だけではダメ。契約内容について十分な検討をしないまま契約し、トラブルになることが多い。1社だけでなく、複数の業者から見積もりを取り、慎重に選ぶことが基本。契約前に、どのような作業を、どの程度の費用で、いつ行なうか、しっかり確認する。そして、それらのことを契約書面にしっかり明記することだ。
【事例2】解約を申し出たら高額なキャンセル料を請求された
遠方で一人暮らしの母が亡くなり、地域の便利屋に遺品整理を頼んだ。見積もに3日間の作業で費用は37万円とあったので、了承して契約をした。後日20万円で作業するという事業者を見つけたため、便利屋にキャンセルを申し出ると、17万円のキャンセル料を請求された。キャンセル料について説明されておらず、高額で納得できない。(岐阜県・60歳代男性)
キャンセル料のトラブルも多い。単なる見積りのために訪問を要請した事業者とその場で契約した場合、特定商取引法の訪問販売に該当し、クーリング・オフ(契約後の一定期間内であれば違約金なしで解約可能)ができる。キャンセル料は事業者によって異なるので、契約の際にキャンセル料の発生時期、金額をあらかじめ確認しておくことが大事だ。