営業部門の管理職を長くしていましたが、現在の管理職は大変さが増していると感じます。
その理由は営業職が不人気だから。営業担当のなかで、最初から「自分がなりたくて営業担当になった」「営業という仕事が大好きだからなった」という人は相当に少なくなりました。
営業の管理職には魅力がない?
学生に対する意識調査でも営業職はやりたくないと回答する人が7割近くになります。そこで営業部門の管理職はスタート地点ですでに前向きな気持ちで仕事に取り組めない部下を受け入れ、仕事に対して意欲的になってもらうマネジメントの奔走する仕事が重要になりました。
以前であれば、営業職は競争社会なので1年も経てば相当数の社員が退職しても問題なし。人事部にリクエストして新たな人員を採用すればいい...... と考えがちでした。でも、現在は新たな人材が採用できない状態。そもそも、求人難で不人気職種ですから、配属された人材を辞めないように気配りすることが重要な役割となってしまったのです。
いわゆる、リテンションを行いながら業績を出さないといけません。
このマネジメントが管理職の負担になり、管理職を辞めたいと言い出す人が増えているようです。取材していても、「営業部門で管理職するなら営業担当に戻りたい」とか、「営業部門以外の管理職に異動したい」と嘆く声を頻繁に聞きます。
ちなみに、リクナビによる若手営業職への調査によると管理職になりたいと考えている人は2割以下とのこと。むしろ、現場にこだわる営業プロフェッショナルになりたいと考える人のほうが多いくらい。部下からも、大変で魅力を感じない仕事と思われているようです。
それならば、魅力的な管理職になる方法を考えたいので、一つの方法として巧みに部下を掌握するヒントを紹介したいと思います。
3つのタイプの「目的意識」
まず、今どきの若手社員はたとえ自分の本位と反して営業担当になったとしても、多くの人が「自分なりに目的意識を持って仕事をしていきたい」と考える傾向があります。
目的意識を持つとは? 何のためにそれをするのか...... を明確にすること。たとえば、プレゼン資料のコピーするにしても「重要なお客様に配布するもので、読むのは役員の方々。だから、みやすいように準備するのが大事。それができれば、会社の収益に大きく貢献できる可能性が高い仕事です」と、認識して意欲的に取り組みたいわけです。
ですから、仮に営業職になりたくないと回答していた人も営業部門に配属されたら「やる気なんてない」とネガティブな気持ちで満載とは限りません(もちろん、そのようなネガティブ満載の人もいますが)。営業職に対する目的意識を醸成させるメッセージを伝えれば、意欲的に活躍する可能性は相当にあるのです。
ただし、人によって目的意識は違います。各自の目的意識を把握する必要があります。筆者の時代であれば、高い営業成績を上げて影響力を高めたいと考えるタイプが多数を占めていました。
しかし、現在では
・成長したい
・貢献したい
・専門力を高めたい
の3つタイプが増えています。
たとえば、営業の仕事を通じてワンランク上の仕事にチャレンジしたい。貢献したいタイプは自分ではなくお客様のため、組織のためになるかどうか。これらは一見、素晴らしく問題がないようにも思いますが、利益よりも他者を優先してしまいがちなので、会社の方向性と違うところに走ってしまうという恐れもあります。
専門性を高めたいタイプは知識や能力を高めたいと考えます。自分の知識を蓄積し、高い能力を身に付けること...... を目的意識と考えがち。そこで、営業部門の管理職は新たに配属されてきた部下がいれば「どのようなタイプか?」を聞く、ないしは想像して目的意識を醸成させるメッセージを伝えましょう。
たとえば、貢献したいタイプの部下が配属されたときに、
「わが部署はチームでの成果を出すことを重要と考えています。○○さんの経験はチームの一員として貴重な存在です。大いに期待しています」
とメッセージを伝えたら、ネガティブであったかもしれない気持ちさえ前向きに変えることができる可能性が相当にあります。
管理職は目的意識を醸成するためメッセージの発信にこだわることを心がけましょう。それができれば部下の掌握が進み、営業成績も向上すること間違いありません。(高城幸司)