ワンマン経営ほど大きい「命令型」不祥事のリスク
米国でシリコンバレーを拠点としてEV(電気自動車)に特化した新世代の自動車メーカーとして発展を続ける、テスラ社のイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)が、インターネットで公開した社員に送ったとされるメールに次のようなくだりがありました。
「テスラでは、会社全体の利益のために働くことがすべての社員の義務だと思ってほしい。そのためには、誰が誰にコンタクトをとっても構わない。もちろん私に直接でも構わない。他人の許可を待つことなく必要な相手にコンタクトしてほしい。確実に仕事を正しい方向進めるために、コミュニケーションを阻害するサイロをつくってはならない」
すなわち、マスク氏は従来のタテのコミュニケーションを中心とした大企業的組織管理を否定こそしないものの、その命令者が過ちを犯す危うさも認識したうえで、ヨコのコミュニケーションの重要性を確実性という観点から強調しているのです。
タテのコミュニケーションの確実性を高めるのは、取りも直さずヨコのコミュニケーションによるチェック機能の発動に他なりません。ヨコのコミュニケーションの有効性を重視した、新世代経営者ならではの新世代の組織管理であると言えるでしょう。
まずリーダーが理解すべきは、自身も含め「タテのコミュニケーション=命令」は組織において決して万能ではなく、ワンマン体質が強くなればなるほどリスクも大きくなる、ということ。
東日本銀行のような命令型不祥事の再発を予防する観点のみならず、あらゆる誤った経営判断を回避する観点から、組織におけるヨコのコミュニケーションを活発にしかつ重視するステラ社の管理に学ぶべき企業は多いのではないかと思います。(大関暁夫)