【IEEIだより】福島レポート 「老人力」でエネルギー溢れる復興の街へ(越智小枝)

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傷を負っても、カラダの一部

   同じく飯舘村に帰村された60代のKさんご夫妻は、里山汚染という逆境の中、敢えて山野草や里山と暮らすことを選択されました。事故の翌年に、ご自宅の山で採れたうるいの線量が検出感度以下であったことがきっかけで、「これなら住めるのでは」と思ったそうです。そんなKさん夫妻も、裏山の除染では一度は帰還を諦めかけたと言います。

「昔から、居久根(いぐね・屋敷林のこと)を切るのは家を建てる時かお金がなくなった時だけ、と決まっていた。原発事故の後、除染のために居久根を切ったことは、家族の分断の象徴のようでした。」

   しかし、その木材を何とか使って家を建ててくれる、という人が現れたことに勇気づけられ、居久根を使ったログハウスを建てました。屋内の線量は、年間1ミリシーベルトをはるかに下回ります。

「いつか子どもたちが帰って来たくなった時の場所があればいい。」

   そんな思いを込め、40年間丹精込めて育てた木を大黒柱にしたログハウスには、今、山菜取りや山野草ツアーのお客が全国各地から訪れます。最初は猛反対していたお子さんも、今では「いつか戻ってくるから」と言われるそうです。

   そんなKさんの原動力は、いい意味での「妄想力」。

「こんな野菜を作ろうとか、こんな商品を作ろうとか、いろいろ楽しいことを妄想しちゃうんです」

   しかしその「妄想」は、厳しい現実から決して目をそらすことはありません。

「傷を負っても体の一部。捨てる訳にはいかないでしょ」

という言葉に、生きることへの自信がうかがえます。

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