魅力の「楽天経済圏」 第一生命「秋波」送る
一方、これより先の4月23日、第一生命ホールディングス(HD)と楽天生命保険が、保険商品の販売や調査・研究の分野で業務提携すると発表した。第一生命グループの商品開発力と楽天グループが持つ約9500万人の顧客基盤を組み合わせ、さらなる企業価値の向上を目指すという。
第一生命HD傘下で、乗り合い代理店向け保険を手がけるネオファースト生命保険が、「楽天市場」の出店企業とその従業員に応じて、保険商品をカスタマイズしたうえで、楽天生命を通じて販売。また、調査・研究の分野では、両社のテクノロジーや、スタートアップ企業とのネットワークを生かした新商品の開発を共同で検討・実施する計画だ。
第一生命HDは、販売先の多様化を進めており、後継者不足に悩む中小企業などで需要が高まっている事業継続の分野に注力し、収益拡大を図りたい。楽天生命との提携に、第一生命グループの関係者は、
「楽天生命は仮想店舗向けのオーナー向け保険などに力を入れたい。第一生命グループとしては楽天に保険商品の開発で協力する傍ら、楽天市場に集まる中小事業主や若者層を取り込みたい。楽天が抱える顧客層に魅力を感じているのは、なにも生保にとどまらないはずだ」
と説明。第一生命側が、秋波を送ったことを明かす。
さらに7月2日には、楽天は朝日火災海上保険を完全子会社化した「楽天損害保険」が誕生。これにより、銀行、証券、生保、損保、カードのすべてに「楽天」が冠された、事実上の「楽天フィナンシャルグループ(FG)」が完成した。楽天市場に集まる仮想店舗の事業者と消費者を抱えるECサイトと連携した、この「楽天経済圏」(三木谷浩史社長)こそが「楽天FG」の強み。
しかも、楽天は携帯電話事業に参入。カード事業を中心に、消費から銀行、証券、保険のすべての取引が、1台のスマートフォンで済む時代がやって来たのだ。
ここ数年、保険大手の「営業」といえば、銀行や保険代理店を通じて行う機会が増えた。ただ、その半面で代理店(販売)手数料の問題が浮上。保険会社も、販売する銀行なども顧客とのトラブルを招くケースがあって、やり玉にあがっている。それに伴い、金融庁の監視の目も強まった。
保険大手は、かつてオフィスに出入りしていた保険レディが建物から追い出され、「自力営業」に腐心するなか、営業力強化のためにはなりふり構わなくなってきたのかもしれない。