若い頃、憧れていたブランドというのは誰にでもあるものだ。1986年に石川県で生まれた私にとっては、それがギャル系のファッションブランドの「109のセシルマクビー」や「アルバローザ」だったり、「ヒステリックグラマーのショッパー(ショップ袋)」だったり、私が10代の頃はまだ石川県に出店していなかったコンビニエンスストア、「セブン‐イレブン」だったりした。
「たかがコンビニ」に憧れるなんて、変わってるねぇ...... と思ったそこのアナタはきっと、都会で生まれ育ったのだろう。セブン‐イレブンは1974年に東京で生まれた「全国チェーン」だが、出店エリアには意外とムラがある。ちょっと前までは、全然「全国」じゃなかったのである。
あぁ、なんだかオシャレな響き!
2000年代後半になるまで、石川、富山、福井の北陸3県や四国地方にはセブン‐イレブンが1店舗もなかった。東北では2012年に秋田県でオープンし、青森に出店したのはようやく2015年になってからだ。鳥取県にも同じく、2015年まで1店舗もなかった。
ローソンやファミリーマートが全国47都道府県に出店しているのに対して、セブン‐イレブンにはムラがあった。今でこそ、未出店エリアは沖縄のみだ(2019年に初オープンするらしい)が、かつては明らかに「田舎への出店を渋っている」感があったのである。
そう、田舎出身の私は今、ちょっと怒っている。かつてセブン‐イレブン不毛地帯だった石川県で、のびのびと中学生活を送っていた頃の、とある事件を思い出したからだ。
当時13歳だった私は、新潮社の「ニコラ」というローティーン向けファッション誌を愛読していた。誌面を通して何人かの女子と「文通」をしており、そのうちの一人がたまたま隣町に住んでいたので、「一緒に金沢で遊ぼう」となったのである。
ひと昔前ならメル友とのオフ会、今ならツイッター経由で知らない人と会うようなものだろうか。危険といえば危険だが、アナログな手紙でやり取りしていたので、相手が趣味の合う同い年の女の子だということはわかっていた。
ドキドキしながら金沢駅で待ち合わせ、意気投合した。繁華街のファッションビルなどをひと通り歩き、マクドナルドでお昼を食べ終わった頃に、その友人が言ったのである。
「都会には必ず、『セブン‐イレブン』ってコンビニがあるらしい。私の町にはないけど、金沢市なら都会やし、どこかにあるかもしれん」
セブン‐イレブン......? なんだかオシャレな響きだ。都会にあるというだけで、最先端を感じさせた。その「都会特有のコンビニ」は、オレンジ色っぽい看板。限定の化粧品なんかも売っているらしい。
「よし、探そう!」と盛り上がった二人である。金沢市内を走るバスに乗り、「人が多くて都会っぽいエリア」をひたすら探し回った。