「実質実効為替レート」から、わかること
円安を背景に、目先の企業業績は悪くありませんが、企業の景況判断は日銀短観に見られるように、かなり慎重になってきています。2020年の東京オリンピック前の特需も、来年にはピークを迎え、しかも消費増税が予定されています。そうなると、引き締めと言うより、むしろ景気テコ入れ策が必要に見えてきます。
米国が大胆な法人減税を実現した影響も大きく、企業の直接投資が米国に流れているように見えます。日本企業によるM&Aも依然活発です。何か新規事業を行う場合、日本国内で行うのか、それとも国外かとなると、米国の低い法人税は圧倒的に魅力的です。
こうしてみると、絶対水準としての円はかなり安いのですが、経済の現実が円高への動きを阻止しているように見えます。今はこの微妙なバランスが釣り合って動かないのですが、ドル円のチャートをみてわかるように、大きな三角持ち合いになっており、これはどちらかに抜けると大きい動きになることを示唆しています。
常識的には円高方向へのブレイクが期待されるのですが、上昇する米金利、低い法人税、巨大な海外マーケット等を考慮すると、意外な円安の可能性もでてきているように思えます。そうなると実質実効為替レートで見て、かつてない円安、1ドル360円時代以上の円安レベルへと円は押し下げられることになります。
にわかには信じ難いですが、今年後半、そうした局面が現れるのかも知れません。(志摩力男)