タバコを落としパニック、イライラして不注意運転
別の統計をみると、「交通事故死」の中に占める船の沈没や飛行機の墜落死は年間1%台以下、クルマにはねられた歩行者が3割近くいるという。
それにしても、タバコを吸う人がクルマを運転すると死亡リスクが高くなるのはなぜか。
相田准教授はこう語る。
「運転中にスマートフォンを使う行為は、日本では危険だとして道路交通法で禁じられていますが、クルマのシガーソケットを使ってタバコに火をつける行為も、同様に複雑で危険な操作です。タバコを吸う私の父のクルマに乗ると、シートに焼け焦げの穴がありました。もし、運転中に火のついたタバコやシガーソケットを落としたら、スマホを落とした時とは比べものにならないパニックになるでしょう。スマホを見ながら起こした事故はニュースになりますが、タバコを吸って起こした事故は報道されません。かなり多く、表に出ないタバコが原因の事故があると思われます」
数十年も運転を続けているうちに、たった1回でもタバコを落としてパニックになったら、それで一巻の終わりだというのだ。このため、海外では台湾やイタリアなど、運転中の喫煙は運転者の注意が散漫になるとして法律で禁止している国もある。
また、米国の一部の州や英国、オーストラリアでは、車内の受動喫煙を防ぐ目的もあって運転中の喫煙を規制しているという。
さらに、喫煙は運転者の健康、とくに精神状態によくないという。
「そもそも喫煙者はニコチン依存症です。イライラしながら運転をして、タバコを吸ってホッとする、またしばらくするとイライラして...... を繰り返します。運転を続ければ続けるほど、どんどんストレスがたまるので、重大な事故につながりかねません。実際にデータで死亡リスクが高いという結果が出たのですから、日本でも諸外国のように、運転中の喫煙を規制すべきでしょう」