「貿易摩擦」に敏感な日本株 大事なのは発言じゃない「トランプが何を実行したか」だ!(小田切尚登)

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米国の貿易赤字、対中国向け3752億ドルで圧倒的

   ここで貿易摩擦の最大の戦場である米中の具体的な動きを見てみよう。よく知られるように、米国は巨額の貿易赤字を抱えている。その中でも、圧倒的に大きいのが対中国の貿易赤字で合計3752億ドルにのぼる。それに次ぐのが、対メキシコの711億ドル、対日本の688億ドル、対ドイツの643億ドルとなっている(米国政府発表の2017年の統計による)。

   中国からの米国の輸入は5056億ドルで、米国の中国への輸出1304億ドルの4倍近い。トランプはこの不均衡を是正するために関税をかけると言っている。もしも互いに関税をかけあったら、米国が中国の4倍近くの金額までかけられるので有利だろう、という発想だ。

   中国はそうなったらこちらも関税をかけると言っているが、それ以外にも二つの対抗手段がある。一つは中国元の切り下げである。自国通貨が安くなれば輸出に有利になるので、関税の影響を緩和できる。もう一つは米国債の売却である。中国は約1兆1800ドルの米国債を保有しており、この一部でも売り出せば米国に打撃になるとみられる。

   ただし、どちらにしても中国に副作用を及ぼす懸念がある。自国通貨安は資本流出とインフレを招く恐れがある。また、米国債を売ると中国自身の持っている米国債の価値が下がるし、中国元の為替レートの引き上げにつながるとみられる。そうなれば世界経済全体に大きなダメージを生むことは間違いないところだ。

   そこで投資家の対応としては「質への逃避」というのが基本になっている。不安な要素が多いので、できるだけリスクを減らしていこうということだ。具体的には米国債などの安全とされる資産が買われる。通貨では日本円や米ドルが買われている。逆に比較的リスクの高い新興国の株式などが大きく売られている。

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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