トランプ大統領の予測不能な行動は、世界にいろんな混乱をもたらしている。
しかし、こと株式相場においては、その影響は限られていた。彼が2017年1月に大統領に就任して以来、世界の主要国の株価は1年以上順調に上昇してきた。
2~4月、日本の株式市場であった「3つの谷」
多少のネガティブな展開であれば、米国経済が減税により過熱ぎみなのを、少し冷やす程度の話で、たいして問題はないとみられた。さらにトランプ政権は基本的に「掛け声倒れ」というのが共通の了解だった。
その中で唯一、貿易摩擦に敏感に反応してきたのが日本の株式市場である。今年(2018年)になって、日本の株価が低迷したのは2月から4月にかけてで、その間に3つの谷があった=別グラフ参照(出所:日本取引所グループ)。
(1)2月4日の米国産トウモロコシの対中輸出についてダンピングの疑いで中国が調査を始めた。TOPIXは2月5日に2.2%、2月6日に 4.4%下落した。
(2)3月1日にトランプがアルミと鉄にそれぞれ10%と25%の関税をかけると発表した。TOPIXは3月2日に1.8%、3月5日に0.8%下落した。
(3)3月23日に中国が米国の関税への報復で30億ドルの関税をかけると発表した。TOPIXは3月23日に3.6%下落した。
その一方で、欧米の株式相場は6月半ばまで、それほど反応していなかった。どうやら日本の株式相場には貿易摩擦に対して特に大きく反応する傾向があるようだ(以上、日本株の推移についてはオックスフォード・エコノミックスの分析を参考にした)。
それが6月19日に潮目が変わった。この日にTOPIXは1.55%下がり、米ダウ平均株価は1.15%下がった。ボーイングやキャタピラーなどの産業株の下げがダウを大きく押し下げた。さらに、中国の株価も大きく下がった。上海指数は1日で3.78%下がり、2年ぶりの下値になった。
市場では、トランプは本気で貿易戦争をしかけており、世界経済に大きな地殻変動が起きる可能性がある、というのがコンセンサスになりつつある。未来への不安というのは投資家が最も嫌うところだ。