大企業の間で「ジーンズ出勤」を解禁する動きが広がっているそうだ。
朝日新聞によると、ある大手商社は2017年、ジーンズなどで出勤していい「脱スーツ・デー」を週1日導入し、この(2018年)5月からは週2日に増やした。脱習慣で柔軟な発想を仕事に取り込みたいからだという。
服装をイチイチ会社から指示されるなんて
また、ある家電大手では今年4月、工場などを除いた国内の職場で服装を自由化した。社員たちはジーンズ、Tシャツ、スニーカーなどを着用して仕事をしている。これも社員が働きがいを持ち、会社の成長につなげる活動の一環だという。
まあ、悪いことではないのだけど、どうもイマイチ腑に落ちない。
服装というものは、工場や警察、自衛隊なんかを除くと、他人に不快な思いをさせない限り、基本的には個人の自由であるはずだ。それをイチイチ会社から指示されるなんて、おかしくないか。
先の大手商社では、脱スーツ・デーは週2日とのことだが、3日、4日とジーンズ出勤したら、会社からお目玉を食らうのだろうか。
逆に、毎日の服装を自由化した家電大手では、社内向けの経営方針発表会には社長自身がカジュアルな服装で現れたとか。そうすると、自分の趣味で毎日、スーツにネクタイ姿で出勤していたら、上司から注意されるのではないだろうか。
それに、こうした服装の自由化には「柔軟な発想を仕事に取り込みたい」とか「会社の成長につなげる」とか、会社本位の考えが見え隠れしている。いや、見え隠れではない。それが最大の狙いであるようだ。
着物で通勤、やってみると意外にも......
話は飛ぶが、共産党の一党独裁である中国では、服装にも厳しい規制があるように思われるかもしれない。だが、そうではないみたいだ。
2000年代の前半、僕はハルビンの大学で、ボランティアで日本語を教えていた。ある日、日本語科の入学式があるというので、日本から携えてきた一張羅のスーツを着込んで出席した。
ほかの先生たちも同じような服装かと思っていたら、日本語科のトップのK教授は革ジャンにジーンズという格好だった。
数年前、その日本語科の創立30周年の記念式典があり、僕も日本から招かれた。もちろん、スーツにネクタイ姿で出席した。すでに定年退職したK教授にも再会したが、彼はしゃれたシャツを1枚を羽織っているだけだった。
一般に中国では(僕が付き合っていた人たちに限ってのことかもしれないが)結婚式だって、花嫁花婿は着飾っているが、参会者には普段着が多かった。
朝日新聞には、着物で通勤するIT技術者の話も載っていた。妻の影響で、着物のおしゃれに開眼したのがきっかけで、最初は「周囲の目」が気がかりだったが、やってみると、上司、同僚や社外の人からもすんなりと受け入れられたそうだ。
われらが勤め人諸君にも、これくらいの「勇気」を持ってほしいものである。(岩城元)