経営幹部に重要なのはリーダーシップバランス
先のベンチャーキャピタル(VC)の関係者たちに、ここまでの話をしてから再度、「先にどちらかに投資をするとすればL社かR社か?」と質問してみると、今度は全員が「R社」と答えました。その理由を、先のS氏が解説してくれました。
「どんなに素晴らしい技術力、発想力を持っていようとも、組織運営に不安のある企業には投資はしません。組織マネジメントの確立は、事業云々以前に投資対象として備えるべき大前提です。ベンチャー投資にリスクは付きものとは言え、われわれVCの出資金は基本的に投資家からお預かりしているものですから、投資時点で毀損する可能性を感じる先には投資できません。L社は定着率の悪さから推し測られる、行き過ぎたワンマン経営を修正してはじめて、成長のスタートラインに立てるとご認識いただいたほうがよろしいでしょう」
株式上場を目指すか否かにかかわりなく、組織にとって企業風土の安定は発展の第一歩であるということなのです。
ハーバード・ビジネススクールの、とある調査レポートによれば、「『自分の上司は公平だ』と思える社員は、組織の『経営リーダー』に対しても高い信頼を持つようになる」のだと言います。
これは、R社の高い定着率を裏付ける話でもあります。部下は保身の塊であるイエスマンの上司には、決してツイていきません。社長が自社の一層の発展を考えるなら技術やサービス面での向上はもとより、イエスマンをつくらない、自身のリーダーシップバランスを心がけることも重要なのだ、と認識する必要がありそうです。(大関暁夫)