電車の中で隣に座っている年配の女性2人の会話が耳に入ってきた。
「行きたくなってから行ったのでは、もう遅いのよね」
「そうよ、行きたくなりそうだったら、早めに行っとかなきゃ」
トイレの話だった。
女性トイレ前の行列は見るに忍びない
電車の駅や百貨店、劇場、映画館などの女性用トイレでは、順番待ちの行列をよく見かける。トイレに行く女性たちが限られた時間に集中する劇場や映画館では、その行列はさらに長くなりがちだ。
男性用トイレでも、行列のできることはあるが、女性用トイレの比ではない。男である僕にとって、女性用トイレの行列はほんとに見るに忍びない。申し訳ないし、ある種のセクハラであるとも思っている。
女性用トイレに行列ができやすい最大の原因ははっきりしている。それは、女性は用を足すのに男性よりも時間がかかる。つまり、トイレも男性よりそれなりに多く設けておく必要がある。それなのに、現実がそうはなっていないからだ。
東京のJR新橋駅。改装で新しくできたトイレを見てみると、男性用はいわゆる「小」が10、個室が8、合わせて18ある。一方、女性用は個室が14だ。女性用は男性用より4つも少ない。
だが、これはまだましなほうで、同じ新橋駅でも別のトイレでは男性用の「小」11、個室3の計14に対して、女性用は個室が6で、なんとも不公平である。
トイレから「女性が輝く社会」に!
最近は男性用、女性用のトイレ内の便器配置図をご親切にも入り口に掲げるところが増えてきた。おかげで、わざわざ中をのぞかなくても、それぞれの数がすぐに分かる。
電車の駅や百貨店などの他のトイレもいくつか見て回ったが、女性用が男性用の半分、あるいはそれ以下というのも目立つ。男が外で働き、女性は家庭を守る、外出はたまに...... という旧来の価値観に基づいているみたいだ。
これでは、女性用に行列ができるのは、当然である。
もちろん、女性客の多い百貨店なんかでは、階によってはトイレを女性用だけにしたり、気配りしているところもなくはない。だが、世間一般では考えがまだそこまでは進んでいない感じだ。
もっとも、女性用トイレの行列については、女性自身にもいくばくかの責任があるみたいだ。知人女性によると、トイレに腰かけて本来の用を足すだけではなく、スマホをいじったり、化粧直しをしたりする人もいるとのことだ。
そのへんは心当たりのある女性に自粛を願うとして、冒頭のような会話がなくならない限り、「女性が輝く社会」も何もあったものではない。(岩城元)